まずシリコーン表面に直径2.5ミクロンのシリカ製微小球を単層で整列させた。その試料に、ArFレーザーを、単一パルスのフルエンス10~50 mJ/cm2、照射時間15~60 min、パルス繰り返し1~20 Hzの範囲で変化させて照射した。またレーザー照射の際、その光路にある酸素ガス分子の光吸収の影響を調べるために、Arガスでパージし、そのガス流量を0~20 L/minの範囲で変化させた。レーザー照射後,試料を1 wt%のHF水溶液に90 s浸漬し、さらにエタノール中での超音波洗浄を10 min行って微小球を除去した。レーザー照射された試料表面を光学顕微鏡で観察した結果、すべての微小球下に構造変化が認められた。電子顕微鏡により、直径約1.5ミクロン、高さ約1ミクロンの隆起構造が、約2.5ミクロンの間隔で均一に形成していることが判明した。隆起構造のサイズは、フルエンス、照射時間ならびにパルス繰り返し周波数により変化することも見出した。さらに、均一な微細隆起構造の形成には、Arガスの最適な流量があることもわかった。周期的な微細隆起構造が形成した試料表面に、水を滴下した結果、接触角が150度以上となる最適なレーザー照射条件を見出すことができ、超撥水性を発現させることに成功した。さらに超撥水性が発現したシリコーンゴムを水中に入れたところ、微細隆起構造が形成した表面のみに、厚さ約0.5 mmのエアーギャップ層が自動的に形成することを見出した。この結果は、水の使用下でもシリコーン表面上に電圧を印加できることを示唆し、今後のスマートウインドウ開発の指針を得ることができた。また、硬質化に関する実験としては、シリカガラス改質層の膜厚増加によるクラック発生を抑制する方法を見出し、その応力計算から形成可能膜厚を見積もった。さらに、レーザーに代えて、エキシマランプを用いた試料表面の硬質化を図った。
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