研究課題
本研究では、プラズマ医療における細胞応答の分子機構の解明に重要である、細胞内DNA損傷機構に着目した。プラズマ照射により水溶液中に生成する活性酸素種・活性窒素種 (RONS)がプラズマ医療応用において重要な役割を果たしていることがわかってきており、本研究で扱うプラズマ装置においても、OHラジカル・過酸化水素・硝酸イオン・亜硝酸イオンが溶液中に生成していることが昨年度の研究で明らかになった。今年度さらに検討を進めた結果、スーパーオキシドも生成していることが示され、併せてDNA切断へのペルオキシ亜硝酸の寄与も示唆された。本研究では、前年度に5'末端を蛍光物質で、3'末端を消光物質で修飾した、ステムループ構造をとりうるオリゴヌクレオチド (Molecular beacon: MB)を利用した、蛍光プローブによるROS検出の迅速・簡便さとDNA損傷特異性を兼ね備えた方法を考案した。今年度さらにこの方法を用いて、プラズマ照射条件とDNA切断の関連を検討した結果、プラズマと液面との接触が極めて重要であり、これはOHラジカルの生成特性と極めて類似していることが分かった。このことからもDNA切断においてOHラジカルが重要な役割を果たしていることが推察される。さらに、この実験系と人工細胞モデル(ベシクル)を組み合わせて、細胞内部へのDNA切断因子の浸透性を考察した。この実験では、MBをベシクルに内包させ、これに対してプラズマを照射した。その結果、プラズマ照射は人工細胞モデルを破壊しないが、その内部にDNA損傷を引き起こすことが示された。以上の結果から細胞内DNAに影響を及ぼす活性種とその細胞内への浸透性が示され、本研究で開発したDNA切断解析手法は非常に有用であると考えられる。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (26件) (うち国際学会 13件、 招待講演 1件)
MRS Advances
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