研究課題/領域番号 |
26390097
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
内田 儀一郎 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (90422435)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマプロセス / ナノ複合膜 / ダストプラズマ / ゲルマニウム / リチウムイオン電池 |
研究実績の概要 |
本研究では,負電極に適した物性値(高導電率,高容量,低膨張率)を有するGe系材料を用いたナノ複合膜を,①ナノ粒子生成,②ナノ粒子表面処理・コアシェル構造形成,③ナノ粒子膜堆積をシングルステップで行える新規プラズマプロセスで実現し,次世代高容量Liイオン電池をブレークスルーすることを目標としている.今年度は,Geナノ粒子生成,粒径・構造制御(イオンフライトナノ粒子生成)に関する開発を行った.これまでにスパッタ法を用いてGeナノ粒子を生成し,ガス流速による粒径制御に成功している.今年度は,水素希釈率,基板温度を変化させることにより,Geナノ粒子の結晶性の向上に成功した.アルゴンガスに水素ガスを10%程度添加した時,ナノ粒子の構造はアモルファス構造から結晶構造へと変化し,この時,ナノ粒子全体の80%以上が結晶成分と見積もられた.また,水素ガス添加量を20-40%と増大させても結晶性に大きな変化は見られなかった.基板温度に関して,室温から100度,180度へと上昇させた時,ラマンスペクトルの半値幅が8.6 /cm,5.3 /cmと単結晶Geの3.2 /cmと同程度となり,結晶性が大きく改善した.また,ナノ粒子輸送に関して,ナノ粒子生成領域とナノ粒子輸送領域に分割した新たな装置を開発し,予備的実験を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,Liイオン電池負電極に適した物性値(高導電率,高容量,低膨張率)を有するGeナノ複合膜の堆積を,シングルステップで行える新規プラズマプロセスの開発を目指している.これを実現するために,①ナノ粒子生成,②ナノ粒子表面処理・コアシェル構造形成,③ナノ粒子膜堆積の3つのプロセス開発を予定している.本年度は①ナノ粒子生成に関する開発を行い,Geナノ粒子の粒径制御と結晶構造の向上に成功した.おおむね予定通りに研究は進展している.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,①ナノ粒子生成,②ナノ粒子表面処理・コアシェル構造形成,③ナノ粒子膜堆積の3つのプロセス開発を予定している.今後は,②,③に関するプロセス開発を行う. ②Geナノ粒子表面処理・コアシェル構造形成(インフライトナノ粒子表面処理) 炭化水素系プラズマを生成し,ナノ粒子表面にアモルファスカーボン(a-C:H)導電層を形成する.a-C:H層は,絶縁膜であるが,窒素をドープすることにより,導電性を示すことが知られおり,窒素ガス流量を実験パラメータにしてGeナノ粒子の炭化水素プラズマ表面処理を行う.Ge/Cナノ粒子を回収し,FTIRで表面の化学結合状態,またラマン分光,XRD,TEMで粒径・構造解析を行う. ③Liイオン電池用Geナノ粒子含有膜の堆積(Geナノ粒子含有量の制御とカーボンバッファー材の堆積) 基板加熱によりGeナノ粒子に作用する熱泳動力を変化させ,基板に入射するナノ粒子量を制御する方法や,基板前面のイオンシース構造を変化させ,帯電ナノ粒子の基板入射量を制御する方法を検討し,カーボン膜中へのGeナノ粒子含有量の制御を試みる.作製したナノ粒子含有膜について,ナノインデンテーションで硬度評価,ラマン分光,XRDで構造評価を行う.また,導電率の評価を行う.適宜,Liイオン電池の試作を行い電池容量を評価する.
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