研究課題/領域番号 |
26390098
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内野 喜一郎 九州大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (10160285)
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研究分担者 |
高田 啓二 関西大学, 工学部, 教授 (50416939)
梶山 博司 徳島文理大学, 理工学部, 教授 (80422434)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマプロセス / フォトクロミズム / 金属酸化薄膜 / プラズマCVD / PLD / 蓄電 |
研究実績の概要 |
VHFプラズマCVD装置を用いては、昨年度同様にZnとSiを含む有機金属蒸気を放電容器内に導入してITO膜付のガラス基板上にZn-Si-O薄膜を堆積させ、フォトクロミズムが発現する条件を調べた。今年度は、ロードロック室を通じてガラス基板を導入することで、真空を破ることなく堆積位置に設置することを可能とし、これによって短時間で繰り返し薄膜堆積が可能となった。その結果、10 mm平方程度の面積でフォトクロミズムを発現させることもできるようになった。パルスレーザーアブレーションによる薄膜堆積法(PLD)では、昨年度にSnO2とMgOの組成比1:1ターゲット材を用いることで、30 mm角のITO膜付のガラス基板全面でほぼ一様なフォトクロミズム膜の作製を可能としていた。本年度は、その組成比を、1:10から10:1と幅広く変化さた。その結果、組成比1:1のターゲット材を用いた場合がフォトクロミズム発現に最適であった。本年度は、さらに、これらPLDによるフォトクロミック膜上に絶縁膜と電極膜を形成し、電流・電圧特性を調べた。ガラス基板、ITO、Sn-Mg-O薄膜100 nm 厚(紫外線照射でフォトクロミズムを発現)、100 nm厚SiO2絶縁膜、アルミ電極という構成で、7 mm×16 mmサイズのものを12個用意した。それぞれの試料のITOとアルミ電極間に±1 Vの三角波電圧を周期4分程度で印加して、電流の変化を調べた。その結果、明確な蓄電の波形は得られなかったが、12回中6回の測定において、フォトクロミック膜から電子が抜ける方向の電圧を印加したときは、電圧の上昇時に下降時よりも2倍以上大きな電流が流れた。また、ITOからフォトクロミック膜に電子が入る方向の電圧印加では、電圧上昇時に0.5V以上位から電流が立ち上がり、電圧下降時には、上昇時より大きな電流が流れた。すなわち、明らかに履歴現象がみられ、フォトクロミック膜が単なる抵抗体ではなく、電荷の出入りの存在を示唆する結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PLDによるフォトクロミック膜上に絶縁膜と電極膜を形成し、7 mm×16 mmサイズのもの12個で電流・電圧特性を調べるところまで進展できた。それぞれの試料のITOとアルミ電極間に±1 Vの三角波電圧を周期4分程度で印加した。電圧・電流特性をしらべたところ、絶縁膜が完全ではなく電流の漏れがあるようで明確な蓄電の波形は得られなかったが、波形には明らかな履歴現象がみられた。これは、フォトクロミック膜に電子が出入りしていることを示唆する結果である。
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今後の研究の推進方策 |
PLD法を用いれば、Sn-Mg-O薄膜およびZn-Si-O薄膜において、30mm角の基板全面で、すでにフォトクロミズム発現を可能となっており、本年度、蓄電機能を調べる最初の試みまで行えた。今後は、この蓄電機能をいかに発現させるかに注目して研究を進める。本年度の蓄電試験の問題は、絶縁膜にあると考えている。1つには、電流が漏れる問題であり、2つ目には、SiO2の膜が硬すぎて本研究の目的に合わないのではないかという疑問である。有機薄膜を絶縁物として用いれば、より手軽にデバイスの作成ができ、絶縁が確実に取れる厚みを実現しやすい。しかも、フォトクロミック膜に与えるストレスも小さいことが期待される。フォトクロミック膜の作成過程についても、今後は黒化度より蓄電機能に重点を置いて検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
代表者と分担者2名とで、実験結果が出たところで全員が集まって打合せを行うことを計画していた。ところが、実験結果がまとまるのが年度末の忙しい2月になってしまい、スケジュールが合わず、打合せを行えなかったことで、旅費分が次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度行う予定の打合せ会を、次年度早々に行うことで繰越分を使用し、後は次年度の当初の計画に従って支出していく。
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