研究課題/領域番号 |
26390099
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
須田 義昭 佐世保工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20124141)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | パルスレーザデポジション / プラズマプロセス / 薄膜 / PLD / 裏面照射 / 粉体 |
研究実績の概要 |
ターゲットホルダーとして透明の石英ガラスを用い、粉体を少量充填し、Nd:YAGレーザをターゲットホルダー裏面から照射する新しい裏面粉体PLD法を開発し、対向設置したSi基板上に薄膜を堆積させた。 Nd:YAGレーザの波長は532nm(第2高調波)で、レーザフルエンスは5J/cm2以下になるように調整した。また、基底真空は5×10-3Pa以下、ガスとしてアルゴン(Ar)と酸素(02)の混合ガスを使用した。作製した薄膜はX線回折装置(XRD)や走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて解析した。 裏面照射粉体PLD法でTiO2粉体を用いて作製した薄膜をXRDで分析した結果、ルチル型とアナターゼ型のTiO2の結晶ピークが表れていることがわかった。また、薄膜をSEMで分析した結果、基板上に薄膜らしき凹凸と、いわゆるドロップレットと思われる微粒子が存在していることがわかった。 窒化ボロン(BN)粉体ターゲットを用いて、裏面照射粉体PLD法によるBN薄膜の作製も試みた。その結果、多結晶hBN薄膜が作製できることがわかった。さらにタングステン(W)粉体を用いて薄膜の作製を行った。この場合、結晶性が表れなかった。これらの結果、本手法はターゲットとなる粉体の特性に薄膜特性が、大きく依存することが示唆された。 また、基板加熱無しで結晶性が表れたのは、照射したレーザによる基板加熱効果によると考えている。以上の結果から、今回行った裏面照射粉体PLD法によって結晶性を示す薄膜が作製可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の当初の目的は、「PLD装置で用いるターゲットホルダとして透明の石英ガラスを用い、粉体を少量充填し、Nd:YAGレーザを裏面から照射する新しい裏面照射粉体PLD法を開発し機能性薄膜を作製する」と言うものである。 上述のように、この方法を用いて、Si基板上に光触媒である酸化チタン(TiO2)薄膜作製を試み、SEM像においてドロップレットとともに膜が観測されており、XRD分析により結晶性も観測された。 これ以外にも窒化ボロン(BN)薄膜やガスセンサ材料である酸化タングステン(WO3)薄膜の作製を試み、BN薄膜は六方晶構造であることがXRD分析により確認された。しかし、WO3薄膜は非結晶であった。以上の結果から、今回行った裏面照射粉体PLD法において、粉体ターゲットの種類に依存するものの、結晶性を示す薄膜が作製が可能であることが示唆された。従って、本研究は当初の目的はおおむね達成されていると考えている。 しかしながら、申請者が目的としている高硬度薄膜である立方晶窒化ボロン(cBN)薄膜等の作製は行えていない。これは、薄膜の膜質の制御や、成膜機構の解明が、進んでいないためである。従って「おおむね順調に進展している」とさせていただいた。
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今後の研究の推進方策 |
上述の様に、PLD装置で用いるターゲットホルダとして透明の石英ガラスを用い、粉体を少量充填し、Nd:YAGレーザを裏面から照射する新しい裏面照射粉体PLD法を用いて機能性薄膜を作製することには成功したが、申請者が目的としている高機能を持つ薄膜の作製(高硬度cBN薄膜の作製)には至っておらず、成膜速度も通常の方法に比べて非常に遅い。 これは、粉体の種類や条件(粉体サイズや光学的特性)、ガス圧、レーザの波長や光強度などに大きく依存するためであると考えている。 よって、本年度は、作製対象をよりアブレーションが起こりやすい材料(アルミニウムなど)に絞り、その時のプラズマプルームの計測をより詳細に行いたいと考えている。 また、本手法は基板加熱無しで高い結晶性薄膜が作製されることがわかっているが、あえて基板加熱を行うことで、より高品質な膜を作製することも検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
真空部品・光学部品やターゲット材料等の物品を購入予定であったが、既存の真空部品の加工等により処理したため物品費に残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は、成果発表として国内の学会発表旅費および国際会議発表旅費、研究機関を異動したため研究打合せ旅費等に使用予定である。
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