PLD装置で用いるターゲットホルダとして透明の石英ガラスを用い、粉体を少量充填し、Nd:YAGレーザを裏面から照射する新しいPLD法を開発した。薄膜は、対向設置したSi基板上に堆積させた。 レーザはNd:YAGで波長は532nm(第2高調波)、レーザフルエンスは5J/cm2以下になるように調整した。また、基底真空は5×10-3Pa以下、ガスはアルゴン(Ar)と酸素(02)の混合ガスを使用した。作製した薄膜はX線回折装置(XRD)や走査電子顕微鏡(SEM)等を用いて解析した。 裏面照射粉体PLD法を用いて酸化チタン(TiO2)と窒化ボロン(BN)等の薄膜を作製した。作製した薄膜のSEM像は、やや粗く多くのドロップレットが確認された。成膜速度は通常のPLD法に比べると非常に小さい。XRDの分析結果から、TiO2粉体をターゲットとして作製した薄膜は結晶性が有り、ルチルとアナターゼの混合したマルチエレメントの薄膜であることが分かった。TiO2薄膜作製過程でハニカム構造体のTiO2が観測された。 BN粉体をターゲットとして作製したBN薄膜は多結晶hBNであり、アニールによって結晶性が向上することが判った。その他Bi粉体ターゲットを用いて、Bi薄膜の作製に成功した。 また、基板加熱無しで結晶性薄膜が作製できたのは、照射したレーザによる基板加熱効果によると考えている。 以上の結果から、これら以外にも裏面照射型のPLD法によっていくつかの多結晶薄膜が作製可能であることが示唆された。
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