研究実績の概要 |
研究初年度は、(1)A2BX4 (A:アルカリ、B:遷移金属、X:ハロゲン) シンチレータ結晶の作製条件の確立、(2)分光実験による結晶の質評価、(3)X線光電子分光測定および光反射スペクトル測定による電子帯構造の解明を目的に研究を進めた。まずはA=Rb, K、B=Zn、X=Clを元素とする結晶作成に取り組んだ。ブリッジマン法による作成では、出発試薬の融点の違いによる試薬の分解が観測され、今のところ分光実験に十分な試料が得られていない。しかし、当初から計画していた水溶液法による試料作成においては、比較的大型の結晶の作成に成功した。ブリッジマン法による作成は今後出発試薬と温度条件の検討を行い、再度挑戦する予定である。水溶液法により作成した結晶の質評価のため、光吸収スペクトルを特に基礎吸収端近傍に注意して測定した。吸収端より低エネルギー側に吸収帯は観測されなかったが、念のため基礎吸収端励起による発光スペクトルを測定したところ何らかの不純物または格子欠陥によると考えられる発光が観測された。現在発光中心の特定を進めている。X線光電子分光測定および光反射スペクトル測定から電子構造の解析を行い、バンドギャップエネルギーおよび浅い内殻準位トップと価電子帯トップとの間のエネルギー差を評価した。その結果、本年度作成した結晶は何れもオージェ・フリー発光の発現条件を満足するという重要な結果が得られた。また、浅い内殻準位がZnの3d軌道で構成されるという、従来のオージェ・フリー発光にはなかった新たな知見が得られた。これらの結果は、新タイプのオージェ・フリー発光の実現の可能性を示唆する結果である。
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