研究課題/領域番号 |
26390102
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
市川 洋 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10314072)
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研究分担者 |
市村 正也 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30203110)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ZnOナノロッド / X字状成長 / フォースセンサー / グラフェン / 直接成長 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、酸化亜鉛(ZnO)ナノロッドを、ロッドどうしが交差した”X字状“になるように成長させ、X字状ナノロッドを電極で挟み込んで、フォース印加に対して高感度に応答するフォースセンサーの創成を目指す。そのために、ZnOナノロッドX字状成長のメカニズム解明とその条件最適化、ナノロッド先端を紫外線レーザーで溶融して行うナノロッド先端への電極形成技術を確立して、提案のフォースセンサー作製プロセス技術の確立を行う必要がある。前年度、i)ZnOナノロッドをほぼ設計通りにX字状成長させることができ、ii)グラフェンのZnOナノロッドへの転写を試み、電極層として使える目処が立ったことから、本年度は、1)フォースセンシングの感度向上のため、ZnOナノロッドの長尺化、2)グラフェン上へのZnOナノロッドの成長を行った。 1)本研究で行う水熱合成法によるZnOナノロッドの長尺化については、反応容器を換えていくことでナノロッドの長尺化を試みた。は水熱合成用容器温度の時間変化と成長するナノロッド形状の関係を調べ、水熱合成用の溶液を複数用意し、最初の水熱合成実験容器が、充分に反応が起こる温度まで到達した時点で、予め反応温度まで加熱しておいた新しい溶液に試料を治具ごと漬し、この溶液をさらに加熱して、同じく溶液を交換する実験を行うことで、長尺のZnOナノロッドを成長させることができた。 2)グラフェン上へのZnOナノロッドの成長については、熱CVD法で作製されたグラフェン上への水熱合成法によるZnOナノロッドの形成を試みた。従来法のように、スパッタ法でグラフェン上にシード層ZnO薄膜堆積を試みたが、グラフェンが消失してしまうことから、グラフェン上への水熱合成によるZnOナノロッドの直接成長を試みた。その結果、グラフェンの結晶性に、ZnOナノロッドが配向して成長できる条件があることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ZnOナノロッドの長尺化については、反応溶液の入った容器(ビーカー)を交換していくことで、ナノロッドの長尺化は可能になる。しかしながら、容器を交換し、改めて容器を加熱し水熱反応を起こさせる方式では、ナノロッドに容器交換の痕跡を示す“節”が発生することがわかった。そこで本研究では、水熱合成用の溶液を複数用意し、最初の水熱合成実験容器が室温から80℃に達した時点で、予め新しい40℃まで加熱しておいた新しい溶液に試料を治具ごと漬し、この溶液が80℃まで加熱されたら、同じく溶液を交換する実験を行うことで、“節”の無い長尺のZnOナノロッドを成長させることができた。6回の水熱実験からは、長さ4.3µmナノロッドが得られ、長尺化の目処を得ることができた。 2)グラフェン上へのZnOナノロッドの成長については、熱CVD法で作製されたグラフェン上への水熱合成法によるZnOナノロッドの直接成長を試みた。本研究では結晶性のよい数層グラフェンおよび結晶性の悪い多層グラフェンを用い実験を行った。その結果、多層グラフェン上に、部分的ではあるが高いc軸配向性のZnOナノロッド群が成長することが分かった。ラマンスペクトル分析から、ZnOナノロッドの成長の有無は、グラフェンの結晶欠陥の多寡によるものと考えられる。この結果は、結晶性の悪いグラフェンにはZnOナノロッドの直接成長が期待できることを示唆した。 3)その他の事項として、グラフェンの電極としての検討のため、ZnOナノロッドにグラフェンを転写して電流-電圧測定をした。先端が尖った半導体性ZnOナノロッドを使うと、非線形的な特性が得られることがわかった。 以上の成果は、国内会議での発表2件、国際会議での発表2件にまとめることができた。関連の論文は投稿中であるが、おおむね計画が達成できたのではと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の研究で、グラフェン上へのZnOナノロッドが直接成長できることがわかった。しかしながら、グラフェン全面への成長は確認されてはおらず、成長への条件確立は重要な項目である。一方、ZnOナノロッド長尺化の目処が立ったことから、高感度フォースセンサー創成にむけて、最終年度であるH28年度は、以下の様に研究を推進する方針である。 1)ZnOナノロッドが直接配向成長できるグラフェンの作製条件最適化を図る。その際、グラフェンの総膜厚も重要なパラメーターとして検討する。 2)垂直配向成長したZnOナノロッドの先端形状と、転写したグラフェンを電極として用いた場合の電流-電圧特性を調べ、線形性・非線形性が起こる原因を確定する。 3)長尺化されたZnOナノロッドをグラフェン上に作製し、上部電極を転写グラフェンで形成して、フォースセンサーを試作し、垂直配向ZnOナノロッド、X字状ZnOナノロッドについて、ピエゾ抵抗変化からのフォースセンシングにおける高感度性の実証を行う。ナノロッドは、半導体性、誘電性(圧電性)のものを作製し実験を行う。 4)時間的に余裕があれば、プラスチック等のフレキシブル基板上へのセンサー素子形成を行い、本研究の素子構造の有効性を示す。
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