研究課題/領域番号 |
26390105
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研究機関 | 東京電機大学 |
研究代表者 |
佐藤 慶介 東京電機大学, 工学部, 助教 (70366384)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シリコンナノ構造体 / 不純物ドーピング / 化学的合成法 / 結晶構造・化学的組成分析 / 表面パッシベーション / 欠陥構造分析 |
研究実績の概要 |
前年度に製造したリンドープシリコンナノ構造体((NH4)2SiF6/POx複合微結晶)を光電変換層として使用するために、今年度は、その材料の価電子帯と伝導帯のエネルギー準位の同定ならびに表面に存在する欠陥構造について評価した。次いで、表面パッシベーション材料と欠陥構造の関係について調査した。まず、紫外・可視・近赤外分光測定およびイオン化エネルギー測定により(NH4)2SiF6/POx複合微結晶のエネルギー準位について分析したところ、その材料のバンドギャップは3.45eVであり、価電子帯と伝導帯のエネルギー準位はそれぞれ5.75eVと2.3eVに位置していることがわかった。また、欠陥構造について電子スピン共鳴法により調査したところ、この複合微結晶はフッ化シリコンとリン酸化物が共にアンモニウムイオンと結合した状態になっているため、欠陥に由来する信号は検出されなかった。さらに、この複合微結晶の表面に炭素と水素から成る化合物(CH系化合物)をパッシベーションさせたところ、欠陥を生成させずにアンモニウムイオンの部分をCH系化合物に置換させることに成功した。以上の結果から、本研究では今年度の目的であった(NH4)2SiF6/POx複合微結晶のエネルギー準位と表面の欠陥状態に関して明確にすることができ、その表面を欠陥の生成なしに炭素系材料でパッシベーションする技術に関しても確立できた。 さらに、本研究では、前年度の課題であったシリコンナノ構造体へのボロンドーピングに関しても検討した。その結果、化学試薬を用いた新たな化学的手法を構築することで、ボロンが添加されたシリコンナノ結晶を合成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の目標であったリンドープしたシリコンナノ構造体のエネルギー準位と欠陥構造について明確にし、さらに表面パッシベーション材料と欠陥構造の関連性に関する知見も習得することができた。また、シリコンナノ構造体へのボロンドーピング技術に関しても確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、表面パッシベーション有無の不純物(リンまたはボロン)ドープシリコンナノ構造体の電気伝導率について調査する。次いで、表面パッシベーション有無の不純物ドープシリコンナノ構造体と有機ポリマーを複合化した太陽電池を製造し、ソーラーシミュレータによる電流-電圧測定と分光感度測定による太陽光スペクトルに対する外部量子効率について分析する。これらの結果から、光電変換層に使用する不純物ドープシリコンナノ構造体と有機ポリマーの最適化を行い、変換効率の向上技術とシリコンナノ構造体を用いた太陽電池の簡易製造技術について構築する。
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