研究課題
前年度に感度校正を行った常温パイロ検出器を用い、本年度はパルス動作のテラヘルツ波パラメトリック発振器の出力特性を実験的に調査し、約25dBのダイナミックレンジを得た。これに基づきパルス動作テラヘルツ波パラメトリック発振器および連続テラヘルツ波光源についてファブリ・ペロー干渉計による波長計測を行い、0.1~1.5THz領域のテラヘルツ波長を0.1%以下の周波数精度で測定することに成功した。これらのテラヘルツ波光源を用いてテラヘルツ分光計測およびテラヘルツイメージングを行い、得られた分光スペクトルおよび2次元透過像からシステム動作の安定性を確認した。また、フィードバック制御システムに不可欠なテラヘルツ波強度の高速制御機構として光学ビームスキャナを用いたテラヘルツ波ビーム制御系を構築し、さらに検出系についても微弱信号増幅に関する電子回路製作を行った。これを透過像計測に応用して動作の安定性を確認し、応答性についても実験的評価を行った。一方、常温テラヘルツ波検出器を遥かに超える高感度や感度可変制御が可能な光読出し法として、本年度は非線形光学波長変換であるアップコンバージョンを用いたテラヘルツ波検出系の高感度化に取り組んだ。前年度までに得られたテラヘルツ波パルス出力をニオブ酸リチウム結晶に集光し、近赤外の励起光を用いたアップコンバージョンによってテラヘルツ波を近赤外光に波長変換した。励起エネルギー密度などの励起条件の最適化を行った結果、1.14THzにおいて110dBのダイナミックレンジおよび2 aJ/pulseの最小検出可能パルスエネルギーを達成し、これまでの結果と比較して2桁程度の高感度化を実現した。以上より、フィードバック制御を用いたテラヘルツ波計測システムにおいてテラヘルツ波光学系・電子回路系の技術基盤に関する知見と超高感度テラヘルツ波計測応用への見通しを得た。
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Phys. Rev. A
巻: 93 ページ: 043836-1-4
10.1103/PhysRevA.93.043836