研究課題
6Li/7Li同位体置換試料を用いた中性子回折実験を行い、従来は大変困難とされてきた複雑な分子内構造を有する有機溶媒中におけるLi+の溶媒和構造およびLi+…陰イオン接触イオン対の構造を高い精度で決定することに成功した。4mol% LiCl-テトラヒドロフラン(THF)溶液および10mol% LiClO4-THF溶液中では、Li+は各々約3個のTHF分子および約1個の陰イオンにより取り囲まれており、最近接Li+…酸素(THF)原子間距離はLiCl溶液では2.21±0.01 Å、LiClO4溶液では2.07±0.01 Åであることが明らかになった。Li+…陰イオン間構造については、最近接Li+…Cl-距離は2.4±0.1Å、最近接Li+…(O)ClO4距離は2.19±0.01Åであることが明らかになった。本研究の成果は、有機溶液中における金属イオンの溶媒和構造情報に新しい知見をもたらすものであり、J. Phys. Chem. B誌に掲載された。次世代高性能リチウムイオン電池の電解液として注目を集めているLiTFSA(TFSA: N(SO2CF3)2)-テトラグライム(G4)溶液に対して、6Li/7Li同位体置換試料を用いた中性子回折実験を実施した。Li+周囲の構造情報を含む差分干渉項を求め、差分干渉項の最小二乗法解析より、溶液中におけるLi+…G4分子間構造の詳細を明らかにすることができた。Li+周囲にはG4分子の酸素原子が約5個配位しているが、4本のLi+…O(G4)距離は短く(1.93~2.13Å)1本のLi+…O(G4)結合は長い(2.24Å)事が初めて明らかになった。溶液中におけるグライム分子Li+間構造を原子レベルで実験から初めて明らかにすることに成功した。本研究の結果は、J. Phys. Chem. Lett.誌に掲載された。
本研究の内容は2016年8月3日に日本経済新聞、2016年8月22日発行の新エネルギー新聞の記事として掲載された。
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Journal of Physical Chemistry B
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