研究課題
本研究では高エネルギー電子ビームが偏向電磁石端部を通過するときに放出されるエッジ放射を扱う。その放射は理論上、中心部に特異点を持ち、偏光方向がその特異点から放射状の空間分布を示し、通常の平面波あるいはガウスモードの放射とは大きく異なる性質を持つ。このような放射と類似な性質を持つ放射として光渦が挙げられる。光渦はエッジ放射と同じように中心部に特異点を持ち、特異点周りに光の位相が変化する性質を持ち、位相は特異点周りに1周ごとに2π、4π…と変化する。光渦は本研究でこれまで用いてきた円偏光アンジュレータから発生することが理論的に示されており、本研究でそのような類似の性質を持つ光渦の観測も行なった。分子科学研究所の研究者との協力によって光渦の特異な位相分布を反映した干渉パターンの観測に成功した。特に位相分布を詳細を観測することにはダブルスリットおよびナイフエッジを用いた回折の手法が有効であることがわかった。さらにこの手法をエッジ放射の観測に応用することも有効であることもシミュレーション計算によって確認された。一方、本研究の観測上問題となっていたレーザーの安定化についても進展があった。これまで用いてきた大気中の長いレーザー輸送路を用いずに、電子蓄積リングの取り出しポートからレーザーを逆に入射する方法を考案し、実際にこの方式でレーザーが輸送されることを確認するテスト実験を行い、良好な結果を得た。レーザーの新たな輸送方式およびさらにレーザー位置フィードバック装置を用いあることで、今後はレーザーポインティングを安定化させた上で高精度なコヒーレントエッジ放射の測定を進める。さらに今年度の光渦の研究を応用したエッジ放射の観測も行なう予定である。
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Physical Review Letters
巻: 118 ページ: 094801-1-5
10.1103/PhysRevLett.118.094801
Proceedings of IPAC2016, Busan, Korea
巻: WEOAA03 ページ: 2036 2038