研究実績の概要 |
昨年度に製作したサンプルチェンジャを用いて、アルミ(厚さ0.5mm)に3GeVの陽子ビームを入射し、アルミの放射化断面積の測定を行った。測定は昨年の12月に実施し、照射後にサンプルを真空容器から取り出し、核種崩壊によるガンマ線をゲルマニウム検出器で測定した。その結果、3GeV陽子に対するアルミから生成するBe-7, Na-22, Na-24の生成断面積を取得できた。入射陽子の強度やビーム形状などが高精度に測定できたため、実験の誤差は数%と低くすることができた。全ての生成核種に対し、既存の低いエネルギー領域の結果の外挿結果と良い一致を示した。
本測定による結果を用いて、核子中間子輸送計算コード(PHITS)の様々な核内カスケードモデルと量子論的分子動力学モデル(QMD)を用いた計算との比較検討を行った。Na-22, Na-24の生成断面積は比較的良い一致を示すものの、Be-7の生成断面積は過小評価をする傾向を示した。また、比較のために評価済み核データライブラリ(JENDL-HE)との比較を行った。JENDL-HEは若干の過大評価を示すものの、良い一致を示す。これはこのライブラリは実験値に合うようにスケーリングしたためである。ただし、以前の3GeVのデータは測定精度が悪かったので、この結果に引っ張られて過大評価をすることが明らかになった。
以上の現状報告及び成果は、IBICやACCAPP等の国際会議や量子サイエンスフェスタ等で口頭発表を行い速報として報じた。
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