研究実績の概要 |
破砕中性子源の加速器とターゲットステーションの隔離のために使用されるビーム窓の寿命評価予測や使用後の放射線評価のため、窓に使用されるアルミの陽子入射に伴う核種生成断面積の測定をJ-PARCセンターの加速器を用いて行った。平成26年度に照射用チェンバと四重極質量分析器を用いて測定するシステムを構築し、平成27年度から実験を本格的に開始した。 実験はJ-PARCセンターの3GeV陽子シンクロトロン出口のビームダンプ(3NBTダンプ)に照射環境を設けて行った。シンクロトロンの取り出しタイミングを変更し、0.4 GeV~3GeVのAl(p,x)Be-7, Al(p,x)Na-22およびAl(p,x)Na-24生成断面積の測定を行った。照射後の試料を取出し、Ge検出器を用いてガンマ線を計測し断面積を測定した。陽子ビームが高精度に校正されていることと、ビーム制御が精密に行えたため、実験の誤差は他の実験より優れたものとなった。モニタガス生成断面積に使用予定の四重極質量分析器(Qmass)が周辺の放射線の影響のため故障し測定を行う事が困難となっていたため、アルミの代わりにJ-PARCセンターのミュオン生成における炭素標的を用いて炭素のガス生成断面積の測定を別のQmassを用いて行った。 実験で得られた得た結果を核内カスケード輸送計算コード(PHITS)及び評価済み核データ(JENDL-HE/2007)との比較検討を行った。JENDL-HE/2007は概ね実験値を再現することがわかった。一方、PHITSは様々な核内カスケードモデルや量子論的分子動力学を用いても、実験を過小評価することがわかった。この原因としては、PHITSに用いられている蒸発過程モデル(GEM)に問題があることがわかった。以上の結果をまとめ、核データ国際会議等に発表するとともに論文に纏め投稿した。
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