研究課題
本研究課題は、チョッパー分光器の単色化チョッパーで選択される複数の中性子ビームが一定の時間差をもって試料に到達することを積極的に利用して、物質におけるミリ秒オーダーの外場応答ダイナミクス情報をリアルタイムで追跡できる新規解析手法の実用化に向けた技術開発の推進を主目的としている。平成26年度は、電場を試料に印可できる試料環境装置の試作を行った。この装置は、J-PARC物質・生命科学実験施設の中性子実験装置で一般的に用いられるトップローディング型冷凍機に上方から挿入することができるものであり、現在、試験測定を継続して実施している。試験測定の結果明らかになった問題点をフィードバックしてさらに改良を進めることにより、平成27年度早々に電場下での中性子非弾性散乱実験を実現できるようになる見込みである。本研究課題では、パルス中性子発生の周期と試料への電場印可タイミングを同期させることのできる「電場同期印可試料環境システム」の完成を目標としているが、平成26年度の実績により、目標達成に向けての重要な1ステップを乗り越えることができた。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書においては、(i) J-PARCの中性子実験装置で一般的に用いられるトップローディング型冷凍機に上方から挿入する試料スティックの改造、(ii) 試料部近傍における放電対策、(iii) 試料に印可する電場の強さや繰り返し周期等の仕様を十分検討した上での電源ユニット部の詳細設計及び開発、を平成26年度の開発目標に掲げていたが、概ね計画通りの開発を進めることができた。
平成26年度に得られた結果を基にして、電場同期印可試料環境システムの開発を継続する。開発に成功した段階で、外場応答ダイナミクスのリアルタイム追跡技術の実証実験として、液晶材料おける電場配向過程のリアルタイム観測をJ-PARC中性子実験装置を使って実施する。電場同期印可試料環境システムの研究開発で蓄積された技術とノウハウをベースにして、パルス中性子発生周期と同期してレーザー光を試料に印可できる試料スティックを新規製作し、「レーザー光同期印可試料環境システム」の開発にも着手する。平成28年度末までに、電場及び光による外場応答ダイナミクスのリアルタイム追跡技術を利用できる中性子実験環境を確実に整備し、一般ユーザーへの提供も進める。これらの結果についてとりまとめ、国内外での学会発表および学術誌への論文投稿を行う。さらに、今回の新規技術を活用した中性子利用研究を加速するため、関係する各分野の研究者を大学や企業等から招いたワークショップを開催し、多角的な研究推進とさらなる成果創出に向けた研究グループを構築する。
当初計画では、電場印可試料スティックを一から設計・製作することを想定していたが、既存の試料スティックを改造することで多くの知見と経験を積むことができた。平成27年度以降は、異なる条件下での試験を並行して実施することにより、開発の効率を向上させるべく、次年度の使用額を増加させることとした。
一台の試作品で明らかになった問題点を改良して次の試作品を製作する、といった開発計画では、実機完成に至るまでに多くの時間を要する。平成26年度までに得られた知見を生かし、開発のスピードを向上させるため、複数台の試作品を用意して、異なる条件下での試験を並行して実施できる開発体制を整える。
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