研究課題
本研究課題は、チョッパー分光器の単色化チョッパーで選択される複数の中性子ビームが一定の時間差をもって試料に到達することを積極的に利用して、物質におけるミリ秒オーダーの外場応答ダイナミクス情報をリアルタイムで追跡できる新規解析手法の実用化に向けた技術開発の推進を主目的としている。平成27年度は、昨年度までに開発を進めてきた電場同期印可試料環境システム試作機をJ-PARCのチョッパー分光器に設置し、「外場応答ダイナミクスのリアルタイム追跡技術」の試験測定を実施する予定であったが、J-PARC物質・生命科学実験施設(MLF)における中性子源のトラブル等により、本試験測定のビームタイムを確保することができなかった。上記トラブルによる中性子ビーム供給停止が長期間に亘る見込みであることが平成27年度の早期に判明したことを受けて、平成27年度の研究計画を「外場応答ダイナミクスのリアルタイム追跡技術」におけるデータ解析環境の構築及びシフトした。J-PARCチョッパー分光器による測定では、1測定あたりのデータ量は数十ギガバイトにも及ぶため、高性能の解析用計算機1台を複数の外部ユーザーとシェアして利用することが一般的である。そのため、本研究課題に特化したデータ解析ソフトウェア等の開発研究を柔軟に進めることが困難であったが、平成27年度に本研究課題専用のデータ解析用ワークステーションを整備することができ、開発スピードが飛躍的に向上した。
3: やや遅れている
平成27年4月末から平成28年2月中旬に亘るJ-PARC物質・生命科学実験施設の利用運転長期停止の影響により、平成27年度中に予定していた実験を実施することができなかったことが研究進捗の遅れの主な原因である。その一方で、研究計画を一部見直すことにより、本研究課題に特化したデータ解析用ワークステーションを整備することができ、データ解析技術の開発スピードを加速することができた。
これまで、平成26年度に電場同期印可試料環境システムの開発、平成27年度にデータ解析技術の開発を進め、「外場応答ダイナミクスのリアルタイム追跡技術」を実現するにあたってのハードウェア・ソフトウェア両面の開発を進めてきた。本研究課題の最終年度にあたる今年度は、J-PARCチョッパー分光器において「外場応答ダイナミクスのリアルタイム追跡技術」の実証実験を早期に行う。実証実験で得られた結果と開発内容についてとりまとめ、国内外への学会発表および学術誌への論文投稿を行う。さらに、今回の新規技術を活用した中性子利用研究の加速とさらなる成果創出に向けた研究グループを構築する。
これまでに述べてきたように、平成27年度に予定していた中性子散乱実験を実施できなかったために、「外場応答ダイナミクスのリアルタイム追跡技術」の実証実験は平成28年度に先送りとなった。平成28年度は本研究課題の最終年度であり、施設トラブルによる実験延期を避けるため、海外の中性子実験施設で複数回実験を行うことも念頭に置いて研究計画を検討している。そのための旅費を確保するため、平成27年度の一部予算を次年度に延伸することとした。また、計測システム全体の問題点は中性子ビームを使った実証実験によってはじめて明らかとなることから、システムの改良や製作にかかる予算も次年度に延伸することとした。
上記理由欄で述べた通り、次年度使用額は海外中性子実験施設への旅費及びシステムの改良費等に充てる予定である。
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JPS Conference Proceedings
巻: 8 ページ: 036011-1~-6
10.7566/JPSCP.8.036011
巻: 8 ページ: 036001-1~-6
10.7566/JPSCP.8.036001
巻: 8 ページ: 036021-1~-10
10.7566/JPSCP.8.036021