研究課題/領域番号 |
26390121
|
研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
田尻 寛男 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 利用研究促進部門, 研究員 (70360831)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 放射光 / X線回折 / 表面結晶学 |
研究実績の概要 |
本研究では試料を透過した回折X線を測定する透過回折を利用したモデルフリーな構造解析法の確立を目指している。透過回折は従来に比べ高効率、高精度な測定が可能であり、同測定法とモデルフリー解析手法を組み合わせることにより、これまで解析が困難であった新奇な表面物性をしめす結晶表面の構造解析が可能となる。この点において表面科学分野の発展に貢献することが本研究の意義である。この目的を達成するための測定装置の整備および解析プログラムの整備が本年度の主な研究実施計画内容であり、以下の事項を実施した。 透過回折実験では数ミクロン厚の試料基板が必要であるため、シリコン結晶基板を湿式化学エッチングによって薄膜化する試料エッチング装置およびエッチングの終点検知システムを製作した。毒物であるフッ化水素酸をエッチング液に使用するため耐薬品性および密閉性の高いデザインとした。終点検知システムを備えることにより、試料厚さを再現性よく制御することができ試料基板の作製が効率的に行える。透過回折実験を実施する際には、ミクロン程度の試料位置調整が必要であり、そのような調整機構をもつ液体窒素冷却三軸試料マニピュレータの設計を済ませた。同マニピュレータの液体窒素冷却機構については、本年度製作済みである。 本研究の実証実験として、大型放射光施設SPring-8の共用ビームラインBL13XUにおいてパラジウムが吸着したシリコン表面のX線回折実験を行った。通常の反射配置での測定に加え、二次元検出器を用いた透過配置での回折実験も実施し良好な結果を得た。モデルフリー解析手法には、表面由来のロッド状の散乱である結晶裁断ロッド散乱(CTR散乱)を一種のホログラムと見なすCTR散乱ホログラフィーの原理に基づく解析アルゴリズムを採用した。さらに、表面構造をより精密に構造決定するための最小自乗法による構造最適化プログラムを整備した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究実施計画に挙げた試料化学エッチング装置の製作および試料マニピュレータの設計を完了し、同マニピュレータの一部である液体窒素冷却機構は既に製作を済ませており、測定装置の整備はおおむね計画通りに実施できた。放射光実験については、大型放射光施設SPring-8を十分に活用でき計画通りであった。解析手法の整備においては、モデルフリー解析手法をもちいてSPring-8での実験結果を解析中、構造最適化プログラムも新たに整備でき、おおむね計画通りに進められた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度取得したパラジウム吸着シリコン表面のモデルフリー解析による未知表面構造解析および構造最適化を推進し、本研究手法の有効性を実証する。試料位置調整のための液体窒素冷却三軸試料マニピュレータの製作および測定装置への組み込み、本年度製作した試料エッチング装置により作製した薄膜基板を用いた透過回折実験を来年度実施することで、測定装置の整備完了としたい。その後、整備完了した装置を活用して、液体窒素温度程度の試料冷却が必要な未知構造表面に対して本研究手法を適用し、表面構造物性研究を推進したい。
|