研究課題/領域番号 |
26390122
|
研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
青柳 秀樹 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 光源・光学系部門, 副主幹研究員 (20416374)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 量子ビーム測定手法 / 放射光 / パルスモード計測 / 光位置モニタ / ストリップライン |
研究実績の概要 |
放射光ビーム位置のパルス・モード計測を目指した本モニタの検出素子は、放射光の受光面をストリップライン型に成形することで高周波特性を格段に向上させることが出来る。挿入光源用ビームラインで本モニタを使用するためには耐熱性を向上させることが必要である。これを実現するために、受光部を小型化し発熱を抑えるとともに、ダイヤモンド基板をヒートシンクに採用した構造を考案した。 ダイヤモンド基板と水冷ブロックの熱伝達係数を最大にするためには、ロウ付けが最適である。水冷ブロックの材質の候補である熱膨張係数の低いタングステンとダイヤモンド基板とのロウ付けを試みたが、熱膨張係数の違いに起因するクラックが発生し破損する確率が高いことが分かった。また、ロウ付け用真空チャンバーの真空度の低さに起因する黒色の汚れの付着があり、電気的絶縁性の悪化も確認された。このため、ロウ付けによる接合による手法は不適合と判断した。 次に、ダイヤモンドと水冷ブロック(銅)の熱伝達係数を高くするために、インジウム箔(融点156℃)、及び、錫(融点228°)箔を間にはさむ方法を検討した。加熱試験を大気中で実施し、それぞれの箔と銅との接着性(濡れ性)を評価した。接着性についてはインジウム箔が僅かに優れているに過ぎなかったが、真空ベーキングの加熱温度(約180℃)が融点を超えている点でインジウム箔が適していると判断した。 水冷ブロックと一体化した検出素子ホルダーを実際の装置に近い形で試作し、インジウム箔の挿入が熱伝達の向上に効果があることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マイクロストリップライン構造の検出素子を直接受光面とする構造の耐熱性について検討した結果、ダイヤモンド基板をヒートシンクに用いる手法へと大幅に設計変更した。そのため、初年度に予定した検出器の製作、及び、その評価試験は遅れることとなり、ダイヤモンド基板と水冷ブロックとの熱接触等の耐熱性能にかかわる個別要素の評価試験についても遅れることとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ダイヤモンド基板を取り付けた検出素子ホルダーを真空下で加熱試験を行ない、より実機に近い条件での耐熱性の評価を行なう。そして、実機型のダイヤモンド・ヒートシンクを用いた検出素子を用いて、放射光位置モニタとしての高周波特性等の評価試験を実施する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金の大半は、ストリップライン型検出器の設計・製作で使用することを予定していたが、初年度において、検討の結果、検出器の構造を根本から見直す必要が生じ、ダイヤモンド基板をヒートシンクに用いる方法に変更した。そこで、当該年度において、受光面となる電極を配したダイヤモンド・シートシンクの構造を確定し、年度内に製作を完了させることを目標としていた。しかしながら、受注業者における製作工程において、複数のトラブルが発生し納品が年度をまたぐ状況となった。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度においては、ダイヤモンド・シートシンクの製作を完了させる。また、光位置モニタを完成させるために、モニタ用の真空容器、放出光電子の収集用電極、遮光マスク等の製作を完了させ、光位置モニターとしての総合的な評価試験を実施する予定である。
|