最終年度にμBeam X線極小角散乱(μUSAXS)装置を利用して材料中のボイド構造評価を目指したが、試料から得られた散乱像はスペックル像となったため解析が困難であった。そこで、スペックル像を利用した解析手法の一つであるX線光子分光(XPCS)測定を行い、μUSAXS装置を用いた全方位スペックル像の取得の有用性を評価した。 直径30μmのピンホールを用いてX線を成形し、水平方向及び垂直方向に2組のSi単結晶を有するコリメート装置(本研究にて27年度に構築)を用いてピンホールエッジから発せられる寄生散乱を除去した。試料としてポリプロピレングリコールに分散させたポリスチレン微粒子を用いた。7.7 m下流に設置したピクセル分解能が30 x 30 μm^2の2次元検出器で試料からのスペックルパターンを30 Hzのフレームレートで取得した。8x10^-3 ~ 8x10^-2 nm^-1の波数領域のスペックルパターンを全方位で取得した。得られたスペックル像の時間相関を計算することで自己相関関数を得た。得られた自己相関関数を解析した結果、微粒子のブラウン運動による緩和を観測することができた。 φ数μm領域における数百nmの構造をX線散乱法により評価するために、μUSAXS装置を開発・製作した。結晶コリメート法を開発し全方位の寄生散乱を除去することにより、全方位の散乱測定を行うことが可能となった。この装置を利用することで試料の構造に由来するスペックル像の取得が容易となり、コヒーレントX線を利用した構造相関評価ができるようになった。
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