研究課題/領域番号 |
26390125
|
研究機関 | 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター |
研究代表者 |
江田 茂 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, 加速器グループ, 主任研究員 (50311189)
|
研究分担者 |
岩崎 能尊 公益財団法人佐賀県地域産業支援センター九州シンクロトロン光研究センター, 加速器グループ, 副主任研究員 (40450952)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エッジ放射 / 超伝導ウィグラー / 放射光 |
研究実績の概要 |
超伝導3極ウィグラーは短波長域の有用な放射光源である。一方で挿入光源のない単純な直線部においては長波長域でエッジ放射が支配的になる。そのため、超伝導3極ウィグラーの設置された直線部での長波長放射は、本来のウィグラーの放射光とも、単純なエッジ放射とも異なる特性を持った放射が観測される可能性がある。このような動機のもと、本研究は超伝導3極ウィグラーの設置された直線部から放射される長波長域の放射を実験、理論両面から研究することを目的としている。 実験では、超伝導ウィグラー部からの可視域の放射を蓄積リングビームダクト下流の光取り出しポート出口において、超高真空側に設置した90度反射ミラーによって、大気側に取り出し、大気側に設置したミラー及びスクリーン等光学系によってその空間分布等放射特性を観測する計画である。本年度は、可視域の放射を大気側に取り出すためのミラーを配置した真空チャンバー(以下ミラーチャンバー)を製作し、単体での真空立ち上げ試験を行った。複数回のベーキング後ミラーチャンバー単体の到達真空度は10の-8乗パスカル台に達し、蓄積リングに設置する真空の条件に到達した。 理論面では、paraxial近似をベースとし、ウィグラー上下流直線部からのエッジ放射の干渉として捉えたモデルを検討し、数値計算と比較した結果、大局的なスペクトル構造が再現することが確認された。この結果はH27年度内にまとめ、年度明け直後に論文誌に投稿し、現在レビュー中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験、理論双方とも当初の計画スケジュールで進んでいる。これまでに計算環境の整備を行い計算、理論面での検討を進めた。ウィグラーの設置されていない既設観測ポートにおいてエッジ放射の基礎的な放射特性の観測を行い、その観測結果は数値計算結果及び、paraxial近似に基づく理解と整合した。この結果は論文として発表した。エッジ放射の基本的理解をベースにさらにウィグラー設置部における長波長域におけるエッジ放射の理論的検討を進め、ウィグラーを考慮したエッジ放射の干渉という観点から検討を進め、計算及び理論モデルから得られた結果は論文として現在投稿中である。またこれと平行してミラーチャンバーの製作、立ち上げを進め、真空チャンバーとして蓄積リングに接続できる真空度に到達した。また超高真空状態においてミラーの制御試験を行い、オペレーションに支障ないことを確認し、ミラーチャンバー単体での立ち上げ試験を終了した。
|
今後の研究の推進方策 |
順調に推移していることから、当初の予定通りH28年度中にミラーチャンバーを蓄積リングに設置する計画である。そのためミラーチャンバーの蓄積リングへ接続する準備を進め、またミラーチャンバー下流の可視光学系の整備を進める。H28年度内にウィグラー直線部からの観測実験を実施し、エッジ放射の干渉モデルを実験的に検証する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ミラーチャンバーから取り出された放射を観測するための大気側観測系について設置場所の空間的制約が大きく、ミラーチャンバーの構造及び設置手順や周辺の状況が確定した上で整備する必要が発生した。また旅費について概算の計上時に学会参加の条件詳細が確定しておらず実際の交通費等経費との間で差額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
大気側観測系をミラーチャンバー構造と配置、周辺の配線配管等考慮してH28年度予定しているミラーチャンバー設置に合わせ、整備する計画である。
|