高速増殖炉における冷却剤や、鉄鋼製造における鋳造などでみられる液体金属の流動現象の予測や解明は、エネルギー・環境問題の解決に必要不可欠である。これらの流動現象では、電磁流体が乱流状態になっており、流れと非接触な外部磁場による流れの制御が重要である。液体金属は不透明・腐食性があり高温であるため、実験測定が困難な物理量までも得ることのできる数値計算手法は意義が高い。本研究では、壁を有する系として規範的なチャネル乱流を対象とし、壁と垂直な方向に一様磁場が印加された電磁流体の直接数値計算を実施した。研究期間全体を通じての成果として、(i)流れ場の可視化により、上下の壁面近傍には乱流境界層(TBL)が、チャネルの中央領域に乱れの弱い領域が存在することがわかった。(ii)条件付き統計により、渦度や速度にはTBLと中央領域の境目で、他のシア乱流と同様に、物量が急激に変化する狭い領域(界面)が存在することがわかった。また(iii)電磁流体に特徴的な量である電流密度にも界面がみられることがわかった。(iv)これらの条件付き統計は、レイノルズ数Reやハルトマン数Haが異なっても、その比R(=Re/Ha)が同一であればよく重なることがわかった。チャネル内における界面の壁からの平均位置の現象論的予測とその検証をDNSとの比較により行った。(v)その理論式は、Rのみの関数であることが示され、wall unit で規格化された界面位置の理論値が、R=600と700における直接数値計算の結果とよく合うことが示された。最終年度では、国際会議ICTAM 2016で発表を行い、また界面の抽出手法の結果に対する依存性を調べた。
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