本課題の最終年度である平成30年度は,前年度までに確立したARカメラの実現のために必要な基礎的な技術を応用し,平成28年度から開始したスマートフォン用のAndroidアプリケーションとして実装したARカメラのプロトタイプを完成させることに重点を置いて研究活動を行った. 具体的には以下の通りである.これまでに既に開発を行ってきていた応力カメラのシステムはデータを処理するサーバと通信する必要がないスタンドアロン型のAndroidアプリケーションであり,画像の取得から二値化による形状取得,応力解析,可視化までの全てのプロセスをスマートフォン上に実装するものである.これらの処理は非常に重たいため,昨年度までは二値化の精度や応力解析の速度などが不十分であり,あくまでもプロトタイプであったが,本年度は最終的なARカメラプロトタイプとして完成することが出来た.さらに,二値化の際に用いる画像認識手法を,領域分割法をベースとした物体抽出手法に改良したことによりプロトタイプとして性能が大幅に向上した. さらに,画像認識部分に試験的にConvolutional Neural Network(CNN)を導入し,より高精度に物体を認識して形状を抽出する方法を試みた.この手法が成功すると,これまでほとんど不可能であった物体と背景が同色である場合の物体抽出も可能になることが予想されるが,現時点では思うような結果は得られていない.このAIを導入する試みは当初の研究計画にはなかったものであり,結果としては5年間の研究の成果として新たな挑戦的な研究テーマが見つかったと言える.
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