研究課題/領域番号 |
26390136
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
阿部 邦美 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 教授 (10311086)
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研究分担者 |
石渡 恵美子 東京理科大学, 理学部, 教授 (30287958) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 線形方程式 / Krylov空間法 / 帰納的次元縮小法 / 丸め誤差の制御 / 複素対称行列 / 共役残差法 |
研究実績の概要 |
大規模疎行列を係数にもつ線形方程式を解くための標準的なソルバーとしてKrylov 空間法が知られている.近年,Krylov 空間法よりも優れた収束性をもつ最新ソルバー(帰納的次元縮小(IDR)原理に基づく解法)が発表され,注目されている.しかし,Krylov 空間法と同様,丸め誤差の影響を受け易く,理論通りに収束しないことがある.そこで本研究では,Krylov 空間法のこれまでの研究の流れ・歴史と同様,最新ソルバーの丸め誤差に起因する脆弱性を数学的に追究することを第一の目標としている.さらに,得られた成果を利用して,先行研究(Krylov空間法,IDR原理に基づく解法群) を改良し,線形方程式ソルバーを盤石なものにすることが第二の目標である. 当該年度の第一の成果は,前処理がKrylov空間法における丸め誤差の影響を制御する一技法であることから,IDR原理に基づく解法の前処理アルゴリズムを提案し,いくつか同種のアルゴリズムの性能評価を行った.第二の成果は,IDR原理に基づく解法の丸め誤差制御のために開発した手法を用いて,共役残差法(先行研究)と数学的に同値であるが表現の異なる従来よりも優れたアルゴリズムを開発した.第三は,複素対称行列に対する共役直交共役勾配法(先行研究)の収束性を改善する新たなアルゴリズムを開発した. したがって,丸め誤差の影響に対する制御手法の開発と,得られた成果を利用した先行研究の改良について,一部を達成することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2年目の研究目標は,最新ソルバーの丸め誤差に起因する脆弱性を数学的に追究すること(とくに丸め誤差が収束スピードに与える影響の解析と,丸め誤差が近似解の精度に与える影響の解析)および,得られた成果(とくにIDR 原理に基づく解法群に対する新しい丸め誤差解析の理論から制御手法を開発)を利用して,従来および最新の解法の収束性を盤石にすることである. 当該年度において,IDR原理に基づく解法の前処理付きアルゴリズムの開発,および いくつか同種の前処理付きアルゴリズムの性能評価を行った.さらに,内積演算から発生する丸め誤差を制御する手法を利用して先行研究を改良した.すなわち,研究目標の後者に当該年度の多く時間を費やし,目標以上に成果を得た.一方で,目標の前者(丸め誤差が収束スピードに与える影響や,近似解の精度に与える影響の数学的な解析)に費やす時間が少なくなり,一部が未達成のためである.
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今後の研究の推進方策 |
アルゴリズムにおける内積演算から発生する丸め誤差が収束スピードに与える影響の解析と,行列ベクトル積やベクトル更新の演算から発生する丸め誤差が近似解の精度に与える影響の解析などについて,たくさんの優れた業績をもつ研究協力者の Sleijpen教授(オランダ,Utrecht大学)を招聘し,議論を行い,さらに助言を得ることにより,研究目的の一つである解析を実現する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定である計算機,および研究協力者のSleijpen教授への謝金がまだ執行されておらず,そのために繰越額が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
計算機,および研究協力者のSleijpen教授への謝金を執行する予定である.
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