研究課題/領域番号 |
26390138
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
鯉渕 弘資 茨城工業高等専門学校, 機械システム工学科, 教授 (00178196)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Anisotropy / Finsler geometry model / Monte Carlo simulation / Phase transition |
研究実績の概要 |
この研究は (1)外力による形態変化が分子の配向性に与える影響に関する研究 (2)2成分脂質分子膜の形態変化 (3)3次元物質Liquid Crystal Elastomer (LCE)の形態変化 を計画の柱として開始した。この内,H26年度は(1)を中心に実施し,同時に(2)と(3)も開始した。(1)では,開いた膜を対象として,脂質分子の3次元構造の自由度を内供自由度(tilt変数と呼ぶ)として取り入れたモデルにより,力学的性質として,膜を2点で引っ張った時に2点間に働く弦張力と,周囲を固定した時に働く表面張力を計算した。その結果,これらの外力によって,tilt変数の秩序-無秩序転移が誘起されることを確かめた。更に,tilt変数の相関が強い場合に,膜を2点で細長く引っ張るとその方向にtiltが揃い,その結果,弦張力が小さくなるという現象も確認された。この現象は(3)の3次元物質LCEに実際に起こる「soft elasticity」と類似の現象である。この結果は本研究の「Finsler幾何学に基づくモデル」がLCEの異方的な形態変化を説明できるモデルであることを示唆している。これらの結果は論文にまとめて投稿する予定である。 (3)の研究ではLCEの引っ張り応力や体積弾性率などを計算する。この目的のためには,分配関数の「スケール不変性」と,体積一定条件のMonte Carlo計算,を用いる必要がある。従って,これらの手法が形態変化や相転移を伴うどんな場合でも有効なこと調べるなければならない。そこで,これらを標準的な膜モデルで細かく調査した。これについては国際会議(IC-Msquare2014, 2014年9月,Spain)で発表した。また,(2)の研究については,本研究で提案するモデルで2成分分子膜(Cholesterolを入れると3成分)に起こる特徴的な形態変化が自然に理解できることを,途中経過として国際会議(XIV International Workshop on Complex Systems, 2015年3月,Italy)で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画全体としてはほぼ予定通りであるが,3つの研究計画の最初の研究として,H26に実施した「外力による形態変化が分子の配向性に与える影響に関する研究」に関する結果がまだ論文になっていないこと,実際は投稿もできていないことが,やや遅れているとした理由である。
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今後の研究の推進方策 |
計画の柱である残り2つ:(1)2成分脂質分子膜の形態変化,(2)3次元物質Liquid Crystal Elastomer (LCE)の形態変化,を実施する。既に,研究(1)については途中経過を国際会議(XIV International Workshop on Complex Systems, 2015年3月,Italy)で発表しており,また,研究(2)についても,その途中経過を国際会議(IC-Msquare2015, 2015年6月Greece)で発表予定である。これらの研究をさらに進めて,その結果を論文にまとめて投稿する予定である。 研究(1)の中心課題は,実験的に知られている2成分脂質分子膜の,ドメイン形成とドメイン構造の変化を伴う特徴的な形態変化を,モデルで再現すること,その形態変化の相転移次数を調べること,などである。研究(2)の中心課題は,LCEに起こる異方的な形態変化をモデルで再現すること,その相転移次数を調べることなどである。更に,研究(2)では,外力を加えて引っ張ると,その伸びがある程度に達したときに,引っ張り応力が小さくなるというsoft elasticityなどの現象も対象にする。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度末の海外出張(イタリア,ロシア)のための旅費を,少し多めに見積もって残したが,実際の旅費は見積もりよりも少なかったため,その残額が繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度には,この残額を旅費またはPC関連の消耗品などで使用する。
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