研究実績の概要 |
本研究の目的は,Lie群およびLie代数の表現論的枠組みの中で運動量写像と非可換代数とを有機的に相互作用させることにより,不変式論で鮮やかな役割を果たすCapelli型等式へのアプローチを試み,その結果として得られる新たな知見をもってCapelli元を究極的に理解し,翻って表現論へのフィードバックを図ることである.そこで平成28年度における本研究では前年度に引き続いて研究計画書に掲げた3点のうち以下の点に目標を絞り研究を遂行することを計画した. ・随伴多様体,随伴サイクル,Gelfand-Kirillov次元,Bernstein次数等の不変量を運動量写像を用いて記述する. 平成27年度までの本研究において,シンプレクティック・ベクトル空間上の運動量写像を正準量子化することにより自然にoscillator表現が得られること,この手法を不定値直交群O(p,q)の場合に適用すればその極小表現が得られること,および,極小表現は非コンパクト局所好一対(O(p,q),sl_2)に関するHowe双対性のもとでsl_2の自明表現(1次元表現)に対応することを示した.それらの研究をさらに推し進めるため,平成28年度の研究においても引き続き不定値直交群に焦点をあて,その極小表現を一般化する形で,sl_2の有限次元表現に対応するO(p,q)の(g,K)-加群に対し,そのK-type公式,Gelfand-Kirillov次元,Bernstein次数を計算することに成功した.
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