研究実績の概要 |
2018年度までの本研究において,不定値直交群O(p,q)が自然に作用するシンプレクティック・ベクトル空間上の運動量写像を正準量子化することにより,o(p,q)(=O(p,q)のリー代数)の(g,K)-加群を構成し,(o(p,q),sl(2))が好一対であることに着目し,Howe双対性を適用してsl(2)の有限次元表現に付随するo(p,q)の既約表現を構成し,K-タイプ公式の計算に成功した.これを用いることにより,これら(g,K)-加群の表現論的不変量であるGelfand-Kirillov次元およびBernstein次数を計算し,これらのGelfand-Kirillov次元はすべてO(p,q)の極小表現に対応する(g,K)-加群はsl(2)の自明な1次元表現のそれに等しいこと,および,Bernstein次数は極小表現のそれの(m+1)倍に等しいことが判明した.ただしm+1は付随するsl(2)の有限次元表現の次元をあらわす.このことから,我々の(g,K)-加群の随伴多様体(associated variety)はすべて同じ次元を有し,Bernstein次数がそれらを区別するという事実が導かれる.この辺りの事情をより深く理解することを目標として,2019年度の本研究において,O(p,q)の退化主系列表現に我々の(g,K)-加群を埋め込むことにより,そのユニタリ性と零化イデアルを同定する研究を行った.sl(2)のユニタリ有限次元表現は自明なものしかないという事実がどのように関係するのか,また随伴多様体が具体的にどのように与えられるのかを明らかにすることを目指すのである.
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