研究課題/領域番号 |
26400019
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
中島 晴久 桜美林大学, 自然科学系, 教授 (90145657)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 不変式 / 因子類 / 擬鏡映群 / 代数群 / 正規代数多様体 / 群作用 |
研究実績の概要 |
当該年度では主として、Affine正規代数多様体X上の代数群Gの作用について研究している。主な結果は次の通りである。 (1) 因子類群のガロア降下は有限群作用の下でSamuelによって定式化されたが、その時にベースとなった部分を次のように拡張して定式化した:affine正規代数多様体Xに簡約可能代数群Gが作用しているときに、G不変となる因子群からXの因子類群へ全射があるなら、正規閉部分群Hによる商X/Hの因子群と因子類群について同様のことが成り立つ条件を研究し、結果を得ている。Samuelのガロア降下ではXが実質的にfactorialの場合であったが, ここでは一般の正規にしているところも拡張である。 (2) Gの連結成分がトーラスの時に、簡約分岐指数が既約因子の回りで定義される擬鏡映の位数と一致する為には、忠実なG作用はトーラスの中心化群に限るという拙著論文(Journal of Algebra, Volume 242, Pages 536-549)の結果は標数ゼロでの結果であったが、これをcharacteristic freeにつまり野性的分岐に一般化出来た。その際にはAmbyankaer予想の肯定的解決に関するRaynaudらの結果を用いている。この証明において一般の代数群作用について、相対不変式の加群と1次の群のコホモロジーのトーションとの関わりを研究している。 (3) Xに作用する群Gがトーラスの時に、Xがfactoria(もっと一般に正規と若干の仮定)lならば自然な作用分解が因子類を用いて導入出来る。これについては詳しく述べない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2014年4月に大学を転任となり、新しい環境、新たな教育に向けての準備や雑用に時間を費やし、当該課題の研究時間、すなわちエフォートが不足した。研究成果は得ることが出来、英文のpreprint versionの論文は脱稿しているが、上記の理由で論文の記述の完成度を高めることが不十分となっている。 revision中であり、最終稿の印刷した成果の発表が遅延している点で、この達成度の自己点検評価となった。 一方、計画の一部にあるZariski接空間上の擬鏡映から規定される鏡映群による簡約可能群の特徴付けは、容易と見なしていた当初の想定を超えていた。研究を継続しているが、うまく行くのかどうかまだ分からない。また、相対不変式が素元のときに成り立つ(X, G)-自由性を、既約元の場合に一般化しようと試みて多くの研究時間をかけたが、複雑な様相を示していることが分かった。これは因子群に話を移せば、群の擬拡大で記述されるはずだが、綺麗な形にはなっていない。見通しの良い描像を掴むことが望まれるが、かなり時間がかかりそうである。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、affine正規代数多様体への代数群作用の研究を推進したい。以下に述べる(e)以外はこのカテゴリーに属する。(a) 研究実績の概要の(1)で触れた1次のコホモロジーのトーションに対応する相対不変式の加群について、拙著論文(Advances in Mathematics, Volume 227, 2011, Pages 920-944)との関連で研究してみたい。 (b)トーラスの作用の分解定理について、固定群をとる相対不変式として素元を考える。つまり既約元への一般化の手前の結果を発表して、その応用を考えたい。応用は簡約可能代数群の同次元型表現の分類の試み等、幾つか考えられるが、それ以外でもトーラスによる拡大群の不変式の研究に有用なはずである。例のようなものでもこのようなことは研究されていないので、価値がある。尚、究極の一般化としては、相対不変式は既約元で考えるべきものであるので、その場合まで一般化出来ないのには不満が残る展開ではある。(c) Zariski接空間上の擬鏡映によって代数群作用の簡約性を決定出来るという私の予想について、反例があるかもしれないが、証明か反例の決着をつけたい。 (d) (a)で触れた拙著論文は標数ゼロの世界であるが、これのcharcteristic freeへの拡張を考えたい。 (e) 整数表現の擬鏡映群の相対不変式について、どのような記述が出来るのか考察したい。ここではトポロジーの部分を代数で置き換えることが出来るかどうかが関わっており、困難が予想される。(f) homogeneous fiber bundleを用いてSteinbergの固定点定理の簡約代数群への一般化を研究したい。自明な一般化は現在得ているが、この部分ではつまらないと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
インテルの第五世代(Broadwell) Core iプロセッサの発売が遅れて、これを搭載するAppleのPCの発売が送れる見込みとなり、当該年度の購入を諦めた。このため代替品を購入し、物品費が当初の予定よりも減少した。その結果として、当初の計画額を僅かに下回る使用額になった。
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次年度使用額の使用計画 |
差額分は小さな金額なので、繰り越しになっている研究の現状として必要となる最適なPCを選択してその購入に当てるが、高額な物品ではない。 その他については次年度の当初の計画通りに使用していく。すなわち、研究打合せの旅費、及び研究のベースとなる研究書(電子書籍を含む)及びオンラインジャーナルからの論文の購入、その他の研究に必要な少額の細かな物品の購入に当てるものとする。必要に応じて電子媒体の閲覧に適したPad型の機器の購入も検討する。
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備考 |
上記は一般向けであり、専門家向けのwebページは準備中である。
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