今後の研究の推進方策 |
なすべきことは多いが、「Kummer theory for algebraic tori and normal basis problem」の結果を整数論や数論幾何学で応用して見せなければ、研究の意義について説得力に欠けるように思う。本来の研究主題であるfinite flat group schemeと正規底問題は常に心に入れておかなければならないにしても、「Kummer theory for algebraic tori and normal basis problem」の結果の具体的な応用を示す試みに取り組む必要がある。その意味で、木田教授との共同研究で生成多項式の具体的な例を見出したことは、本研究の進展とって非常に意義がある。 本研究は、SerreがGroupes algebriques et corps de classes (Hermann, Paris, 1955)で論述した、逆Galois問題を群環の可逆元のなす代数群によって捉える発想を出発点としている。この発想を基に生成多項式の存在や不変体の有理性に関するNoether問題は自然に議論が展開できるのだが、不思議なことにSerreの観察は看過されて来たようである。 R.G.Swan, Invariant rational functions and a problem of Steenrod, Invent. Math. 7 (1969)、H.W.Lenstra, Rational functions invariant under a finite abelian group, Invent. Math. 25 (1974)、D.J.Saltman, Generic Galois extensions and problems in field theory, Adv. Math. 43 (1982)、D.J.Saltman, Noether's problem over an algebraically closed field, Invent. Math. 77 (1984)、いずれも生成多項式やNoether問題に関する重要な論文であるが、どの論文もSerreの観点については言及していない。 また、生成多項式やNoether問題については日本でも少なからぬ数の研究者が研究しているが、これまで議論した限りでは群環の可逆元のなす代数群という発想はないようである。これからはこの点を強調しながら本研究への理解を求めたいと考えている。
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