研究実績の概要 |
本研究「有限群スキームと正規底問題」では、平成23年度から25年度にわたって基盤研究(C)で援助いただいた「クンマー理論を巡って、群スキームの理論の観点から」の成果を引き継いで、正規底をもつHopf-Galois拡大について研究を進めた。 平成28年度は「有限群スキームと正規底問題」の第3年度であったが、学術誌に投稿していた「Kummer theory for algebraic tori and normal basis problem」が刊行された。この論文の中で、東京理科大学の木田雅成教授が研究の基礎を築いたalgebraic torusに対するKummer理論について、体の上で展開されていた議論を一般の環の上に拡張した。その中で木田氏による先行研究をisogeny problemとして捉え直し、議論を大幅に簡略にして本質が明瞭に見えるように論述を整えた。これについては木田氏との共著論文としてまとめるべく、推敲を繰り返しているところであるが、大分大学で昨年10月に開催された大分整数論研究集会において概略を紹介した。また、昨年9月に国際センターで開催されたHopf Algebras Conference in Tsukubaにおいて本研究に関する総合報告を講演する機会を得た。 これとは別に、島根大学の青木美穂准教授からLucas数列に関するR.R.Laxtonの論文「On groups of linear recurrences, I」(Duke Math. J. 36, 1969)を教示いただき、Lucas数列に関するM.Ward、Laxton、青木/酒井悠帆による結果がaffine group schemeの言葉を用いることによって、整理され一般化できることに気付いた。これについては青木氏との共同研究を開始したばかりである。
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