研究実績の概要 |
本研究は、暗号、符号の数論的構造を、ゼータ関数を中心として解明することを目的としている。関連するゼータ関数には、Duursma による符号のゼータ関数や、代数体の Dedekind ゼータ関数などがある。本年度は、剰余位数分布問題に関する計算を主に進めた。まず、2 以上で完全 h 乗数でないような整数 a を取る。また p を奇素数として、a の Z/pZ の乗法群における位数を D_a(p) で表す。これがいわゆる剰余位数である。なおこの群は、離散対数暗号を構成するときに使われる群であり、ここに暗号とのつながりが見いだせる。研究代表者らは以前、剰余類に沿った D_a(p) の分布を調べることに成功していた。つまり、D_a(p) を k で割ると l 余る素数 p の自然密度 Delta_a(k,l) を考察し、ある場合に、 Dedekind ゼータ関数に対する Riemann 予想(一般 Riemann 予想)の仮定のもと、Delta_a(k,l) を決定した。さらに、この問題の「2変数版」も研究した。それは、群 Z/pZ の乗法群の代わりに、Z/pqZ の乗法群(p,q は異なる奇素数)を取って、同様の剰余位数 D_a(pq) を考えるものである。この場合、D_a(pq) を k で割って l 余る素数 p, q の組 (p,q) の自然密度を Gamma_a(k,l) で表す。研究代表者らは、a のsquare-free 部分が奇数の場合に Gamma_a(4,l) を決定することに成功している(l=0,2 の場合は無条件、l=1,3 の場合は一般 Riemann 予想のもとで)。本研究では、さらに a の square-free 部分が偶数の場合に、Gamma_a(4,l) を決定することを目標としており、ある種のガロア群の作用で決まる係数の決定が、一部終了した。
|