研究実績の概要 |
今年度は Lagrangian fibration の構成に必要な予備定理の確立と, Lagrangian fibration のさらなる詳しい性質を究明することを試みた.前者に関しては, 単位円盤から一点を除いたものの上にある滑らかな abel 多様体をファイバーとするファイブレーションを単位円盤全体に拡張するという問題を考察し, これまで得られた知見と合わせて, 中間報告を京都大学で行った. 後者に関しては2つの知見を得た. 一つはラグランジアンファイブレーションの特異ファイバーが階層化である. 一般に abel 多様体を一般ファイバーにもつファイブレーションの特異ファイバーはより次元の低い abel 多様体と有理多様体から組み立てられている. この特異ファイバーの構成要素である abel 多様体の次元は特異ファイバーを特徴付ける重要な量である. この量を用いて, ラグランジアンファイブレーションの特異ファイバーを階層化すること試み, 特異ファイバーが乗っている分岐跡を特異点に関して階層化することにより, その上の特異ファイバーが分岐跡の階層に応じて, 特異ファイバーに含まれる abel 多様体の次元が一定の値を取ることがわかった. もう一点, ラグランジアンファイブレーションの大域的なモノドロミーについて考察した. このモノドロミーは極めて多様にわたるが, この群の代数群としての閉包を取った Mumford-Tate 群という代数群を考えると, 可能性がぐっと少なくなり, 三種類しか現れないということがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は得られた成果を論文にまとめることに主眼を置く. 研究発表および打ち合わせについて, 現段階で決定していることは 7 月に東大を訪問し, ミラー対称性とラグランジアンファイブレーションの関連について研究打ち合わせを行い, また 12 月に特異点と不変量をテーマにした研究集会を京都大学数理解析研究所を会場として行う. その準備の段階で, 高次元双有理幾何から見たラグランジアンファイブレーションの位置づけとシンプレクティック多様体の特異点について, 主として国内の研究者と打ち合わせを行う.
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