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2015 年度 実施状況報告書

ラグランジアンファイブレーションの組織的構成

研究課題

研究課題/領域番号 26400032
研究機関北海道大学

研究代表者

松下 大介  北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90333591)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードシンプレクティック / ラグランジアン
研究実績の概要

平成27年度はラグランジアンファイブレーションを持つ既約シンプレクティック多様体のこれまで知られていなかった特徴を2つみつけることが出来た。一つ目はラグランジアンファイブレーションの像が射影空間であるようなものを持つ既約シンプレクティック多様体を考えたとき、その複素構造を変形して、射影空間の直積への有限射を持つものを構成出来ることを示した。このようなものは複素構造の普遍空間で稠密に存在することもわかった。現在知られている既約シンプレクティック多様体の具体例はすべてその複素構造を変形すれば射影空間を像とするラグランジアンファイブレーションを持つことがわかっているので、この結果から知られている全ての既約シンプレクティック多様体に対し、その複素構造を変形することで、射影空間の直積への有限射が存在することが従う。また射影空間の直積に有限射があれば、射影空間の上のラグランジアンファイブレーションが存在することが従うので、ラグランジアンファイブレーションを構成する一つの方法として、射影空間の適切な有限被覆を考えるという手法が考えられる。二つ目はラグランジアンファイブレーションの一般ファイバーに関する性質である。ラグランジアンファイブレーションはその定義から一般ファイバーはアーベル多様体となる。ここから一歩踏み込んで、一般ファイバーに現れるアーベル多様体がどのくらい特殊あるいは一般のものなのかについての考察したところ、Mumford-Tate 群と呼ばれるアーベル多様体に付随する群の視点からは、極めて一般的なものか、あるいは特殊なものかのどちらかになることがわかった。この二つの場合は複素構造の変形でうつりあうと思われ、そこから一般のラグランジアンファイブレーションは変形することで極めて特殊な構造を持つ可能性が示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の予定では特殊な性質をもったアーベル多様体の族を考え、それを適切にコンパクト化することにより既約シンプレクティック多様体とラグランジアンファイブレーションの新しい具体例を構成する予定であった。その準備のために、どのような性質をもったアーベル多様体の族を考えればよいかという視点から現在知られている既約シンプレクティック多様体とラグランジアンファイブレーションの性質をいくつか調べていたところ、少なくとも射影空間を底空間とするラグランジアンファイブレーションを持つ複素四次元以上の既約シンプレクティック多様体は現在までに知られているものと変形同値なもの以外は存在しないと考える根拠がいくつか得られた。これは現在知られている具体例と位相的不変量が異なるものは存在する可能性が薄いということを意味する。一方、現在知られている具体例と位相的不変量が同じであっても、そうした例の全ての構成方法が具体的に知られているわけではない。また、当初に新しい例を与えるであろうと想定していた構成方法は先の根拠が正しければ、これまで知られている例と同じ位相不変量を持つラグランジアンファイブレーションを与えるはずで、知られている具体例の新しい幾何的描像を与えるはずである。以上を勘案し、ラグランジアンファイブレーションのとりうる位相的不変量の値は知られているもので全てであるという可能性を見出した点はあるものの、具体例を組織的に構成するという目的はまだ進展が不十分という点で、やや遅れているという判断をした。

今後の研究の推進方策

これまでに得られた結果から、次の2つを主たる方針として研究を継続する。
1.ラグランジアンファイブレーションを持つ既約シンプレクティック多様体は現在知られているK3曲面上の層あるいはアーベル曲面の層のモジュライとして得られるものとそれの複素構造の変形によって得られるものおよびその双有理変換によって得られるもの以外は存在しないことを示す。
2.ラグランジアンファイブレーションの特に射影空間を像とするものに対して、ファイバーから定まる周期写像について考察する。
1.についてはこれまでの研究を踏まえて二段階のステップで研究を推進する予定である。a) 特に射影空間を像とするラグランジアンファイブレーションを持つ既約シンプレクティック多様体はK3曲面あるいはアーベル曲面を含むことを示す。b)その上でK3曲面あるいはアーベル曲面とその上の直線束からは自然にラグランジアンファイブレーションが構成出来るが、これが元の既約シンプレクティック多様体と同型であることを示す。
2.については周期写像の性質を調べる。ラグランジアンファイブレーションはアーベル多様体をファイバーとしたファイブレーションであるので、その底空間からアーベル多様体のモジュライへの有理射が存在する。この写像は一般に不確定点、すなわち写像が定義されない点を多数含むが、ラグランジアンファイブレーションから定まる周期写像に対しては写像になると予想される。この予想が正しい場合、ラグランジアンファイブレーションはモジュライの普遍族の周期写像による引き戻しと同型であることになり、これを出発点として、具体例の組織的な構成が可能になる可能性がある。

次年度使用額が生じた理由

平成28年度に函館大沼で行う国際研究集会で総計七名の海外からの研究者を招聘するため。

次年度使用額の使用計画

上記のように国際研究集会の海外からの研究者招聘に使用する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] On isotropic divisors on irreducible symplectic manifolds2016

    • 著者名/発表者名
      Daisuke MATSUSHITA
    • 雑誌名

      Advanced Study in Pure Mathematics

      巻: 未定 ページ: 未定

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] On deformations of Lagrangian fibrations2016

    • 著者名/発表者名
      Daisuke MATSUSHITA
    • 雑誌名

      Birkhauser Progress in Math volume 'K3 Surfaces and their Moduli'

      巻: 315 ページ: 237-243

    • DOI

      10.1007/978-3-319-29959-4_9

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [学会発表] On variations of Lagrangian fibration2016

    • 著者名/発表者名
      Daisuke MATSUSHITA
    • 学会等名
      高次元代数幾何とその周辺
    • 発表場所
      京都大学益川記念ホール(京都府・京都市)
    • 年月日
      2016-02-05
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] On Mumford-Tate group of Lagrangian fibrations2016

    • 著者名/発表者名
      Daisuke MATSUSHITA
    • 学会等名
      Hokkaido University-KAIST(ASARC) Joint Workshop Algebra and Geometry
    • 発表場所
      北海道大学理学部三号館(北海道・札幌市)
    • 年月日
      2016-01-07
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] On certain finite map from an irreducible symplectic manifold2015

    • 著者名/発表者名
      Daisuke MATSUSHITA
    • 学会等名
      Japanese-European Symposium on Symplectic Varieties and Moduli Spaces
    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所(京都府・京都市)
    • 年月日
      2015-10-29
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] Singularities and invariants

    • URL

      http://www.math.sci.hokudai.ac.jp/~matusita/program_en.pdf

  • [学会・シンポジウム開催] Singularities and invariants of higher dimensional algebraic varieties2015

    • 発表場所
      京都大学数理解析研究所
    • 年月日
      2015-12-14 – 2015-12-18

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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