研究課題
モノドロミー保存変形の量子差分という問題について、可解格子模型との類似から考察を行うのが本研究課題である。1次元あるいは2次元可解格子模型における各サイトおよびそこに置く自由度を、リーマン球面上の接続の極及び留数の類似と見ることが自然である。この視点から、主としてパンルヴェVI型方程式について、その表現論的考察を行いつつ、逆に格子模型における幾何学的視点や対称性についても考えたい。一般化の方向として、サイト数すなわち特異点の数を増やす多点化、1サイトにおける自由度を増す高階化、差分化パラメータ依存性に関する楕円関数化などが主な課題である。これまでの考察を踏まえ、高階化の考察を幾何的側面も含めて行った。とくに Lam らによって、その場合のベックルンド変換と関連する変換が quiver algebra とその mutation の言葉を用いて導入する論文が現れたので、対応について考察を行った。詳細について引き続き検討中であるが、Kashaev らの研究との対応関係においてと同じく、接続の変形問題においては初めからある Lax 行列を彼らの構成からどう復元するかは問題である。また Lax 行列については普遍 R 行列の像として得ることができるが、連続極限においてリーマン面のブランチカットにあたると考えられる極の列について、どのような幾何学的な言葉を用意すべきか大きな問題と思われるが解決を見ていない。我々の構成の普遍性から、この問題は今後も中心的課題と考えるべきと思われ、解決がつけば量子差分版の幾何的な見方について一定の進歩になると思われる。今年度はまた、Faddeev が modular double と呼んだ構造について、モノドロミー保存系の量子差分化におけるこの種の対称性の可能性について予備的考察を行った。
編集した論文集「String theory, integrable systems and representation theory」Koji Hasegawa and Yasuhiko Yamada eds., 京都大学数理解析研究所講究録別冊, B62(2017), 200 pages