研究実績の概要 |
本研究の目的は、クラスター代数の差分方程式と三次元多様体への応用に関する問題を考察することである。
27年度は以下の内容を論文にまとめた。トーラス上のネットワークに作用するアフィンワイル群を用いて、時間離散戸田格子方程式の3パラメータ(n,m,k)の一般化を構成した。(n,2,n-1)の場合が、広田氏らによって導入された周期的時間離散戸田方程式、(n,m,0)の場合が梶原氏らによって導入された有理写像に相当する。nとkの最大公約数をNとする。アフィンワイル群の可換部分群の作用を用いて(m+N)個の可換な有理写像を定義し、これらの有理写像について次の結果を得た。(1) 有理写像は離散的な時間発展を与えるが、Lax行列の固有多項式から定まるスペクトル曲線を保存する。(2) それらの時間発展がスペクトル曲線のヤコビ多様体上で線形化される。(3) リーマンのテータ関数を使って初期値問題を解いた。この研究はThomas Lam氏、Pablo Pylyavskyy氏との共同で行った。さらにこの研究を発展させるため、1月にミネソタ大学で両氏と研究打合せを行い、量子クラスター代数を用いたネットワークの非可換化に関する研究を進めている。
この成果について、第9回 IMACS国際会議 Nonlinear Evolution Equations and Wave Phenomena (Georgia大学、アメリカ)、ワークショップ Tropical aspects in geometry, topology and physics (MFO, ドイツ)、研究集会 Integrability in algebra, geometry and physics: New trends (Congressi Stefano Franscini, スイス)の国際会議で招待講演を行った。
|