29年度は2つの問題(I)、(II)を研究し、まとまった成果が出た(I)の内容を論文にまとめた。 (I) Lam、Pylyavskyy、Glickが発展させたネットワークと有理写像の構成方法を応用して、無限の長さをもつアフィン対称群の簡約元に付随するセルオートマトンの族を構成し、その解と対称性について次の結果を得た。(1)有理写像のソリトン解のトロピカル極限では得られないソリトン解が存在することを示し、得られない解を組合せ的に構成した。(2)ソリトン解は、適当な対応によってA型の箱玉系の解の一部と双対的(時間と空間座標と入れ替える対称性)な関係にある。(3)ソリトン解以外に、ソリトン解への緩和解、パルサー解が存在することを数値的に示した。 (II) 昨年度論文にまとめた円筒状quiver上とそこに作用するクラスターR行列の研究を発展させ、これらの幾何的な意味と一般化について次の結果を得た。(1)円筒状quiverと、既に知られている点付き円盤の高次タイヒミュラー空間座標を与えるquiverとの関係を明らかにした。(2)円筒状quiverとA型Weyl群の簡約元との関係を明らかにし、一般のLie環のWeyl群に付随したquiverとクラスターR行列を構成した。
(I)の成果について、ミニワークショップ New development in Teichmuller space theory (OIST、沖縄)および研究集会 Integrable Systems 2017 (シドニー大学、オーストラリア)で招待講演を行った。(II)は東京大学の石橋氏と共同で研究を進行中であり、その成果について、研究集会 Cluster Algebras: Twenty Years On (CIRM、フランス)で招待講演を行った。
|