研究実績の概要 |
平成27年度の研究で得た成果を論文として纏める為に、シンボリックリース環のネータ性を調べる方法として良く知られている「Hunekeの判定法」と、基礎環上で無限生成になる(従ってネータ環でない)シンボリックリース環を与える為の有力な方法として知られている「mod p reduction」の手法を再検証してみた結果、その証明を大幅に簡略化する事が出来、加群の場合に理論を拡張する事も見通しが良くなったと感じている。今年度の研究では、体K上の3変数多項式環 S = K[x, y, z] の斉次イデアル I で次の3条件: (1) xS + I は (x, y, z)-準素である。 (2) S / I の随伴素因子は極小素因子のみである。 (3) I をその極小素因子で局所化すると2元で生成される。 をみたすものを考察の対象とした。最初の条件にある x を y や z に取り換えても同様の理論を構成する事が出来るので、S における高さ2の素イデアルは I の典型的な例となり、スペース・モノミアル・カーブ:x = tのa乗, y = tのb乗, z = tのc乗(t は不定元) の定義イデアル P(a, b, c) に対しても理論を適用する事が可能である。この様な枠組みで「Hunekeの判定法」や「mod p reduction」の手法を進められる事は大雑把には大丈夫であろうと期待していたのだが、現在は確実なものとして認識しており、今後の研究においても積極的に利用したいと思う。また、具体例の構成においても、従来のものよりも明確な論証を行える事が可能になった。例えば P(16, 683, 97) は2次のシンボリック冪の中にネガティブカーブが存在し、そのシンボリックリース環は無限生成であることが分かった。
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