研究課題/領域番号 |
26400039
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高木 俊輔 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 准教授 (40380670)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 特異点論 / 可換環論 / F正則特異点 / 対数的端末特異点 |
研究実績の概要 |
今年度は,次の広瀬大輔・渡辺敬一・吉田健一の予想に取り組んだ:Rを標数p>0の完全体k上定義された強 F正則標準的次数付き環とし,mをRの斉次極大イデアルとしたとき,RがGorenstein環であることと,mのF純閾値fpt(m)が-a(R) と一致することは同値である.ただし,a(R)は後藤四郎・渡辺敬一によって導入されたa不変量のことである.Anurag SinghとMatteo Varbaroとの共同研究において,Rの反標準環がk上有限生成ならば,広瀬・渡辺・吉田の予想が正しいことを証明した.特にR がQ-Gorenstein環であるか,もしくはRが4次元以下で標数pが7以上ならば,予想は正しい. 交付申請書に記載したように,対数標準閾値はF純閾値と対応することが予想されているため,広瀬・渡辺・吉田の予想の標数0における類似として,対数標準閾値を用いた対数的端末特異点のGorenstein性が特徴づけられることが期待される.SinghとVarbaroの共同研究において,この期待が正しいことも証明した.つまり,Sを標数0の代数閉体K上定義された標準的次数付き環とし,Spec Sは高々対数的端末特異点しか持たないと仮定する.nをSの斉次極大イデアルとしたとき,SがGorenstein環であることと,nの対数的標準閾値lct(n)が-a(S) と一致することが同値であることを証明した.また次数付き環でない場合にも類似の特徴づけを与えた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,標数0の特異点の不変量である対数的標準閾値と正標数の特異点の不変量であるF純閾値の対応を特別な条件下で示すことを最終目標としている.対数的標準閾値とF純閾値の対応が正しければ,広瀬・渡辺・吉田の予想の標数0における類似として,対数標準閾値を用いた対数的端末特異点のGorenstein性の特徴づけが得られるはずであるが,本年度はこの特徴づけを証明した.これは対数的標準閾値とF純閾値の対応が正しいことを裏付ける間接的な証拠であり,本研究課題を遂行する上で重要な進展と考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
現在のところ,対数的標準閾値とF純閾値の対応そのものを示すことは難しい.そこで,対応を裏付ける別の根拠として,まず対数的標準特異点の重複度について研究する.F純特異点の場合にはCraig Huneke・渡辺敬一によって重複度の上からの評価が与えられているため,対数的標準特異点の場合に類似の重複度の評価を与えたい.これは対数的標準特異点を持つ多様体上のコホモロジーの消滅定理とも密接に関係しており,大変興味深い問題である.
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次年度使用額が生じた理由 |
学内業務と日程が重なってしまったため,予定していた国内研究打ち合わせ1件を次年度に延期した.そのため差額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
九州大学の渋田敬史氏を訪問するための旅費として使用する.訪問時期は渋田氏の都合を勘案して決定する.
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