研究実績の概要 |
本研究は,射影多様体Xが次数d,次元n,余次元eのとき,「Xを含む次数(d-e+1)以下の全ての超曲面の共通部分はXと一致する」「(d-e)次以上の全ての超曲面が作る線形束はX上で完備である」を証明することを目標とし,更にこの周辺にある問題や現象の発見もめざしている.点からの線形射影が射影多様体Xとその像との間の双有理写像を引き起こさないような中心点を,その射影多様体Xの非双有理中心点とよぶ.B(X),C(X)でそれぞれ,Xの外,Xの内の非双有理中心点の集合を表す. 今年度は,これまでの研究の再検討と残された課題の検討を中心に,計算機による実験も行いながら,研究を進めた.第1に,B(X)とC(X)を持つ射影多様体の特徴付けとその応用についての証明の細部を再度検討した.この件をまとめた論文は発表予定となった.他方で,C(X)を持つ射影多様体の特徴付けの必要十分条件は未だ得られておらず更に研究が必要である.第2に,C(X)が直線となる場合,すなわちロス多様体Xのカステルヌーボマンフォード正則数の上限の再検討と論文の再構成を行った.更に,計算機で,埋め込み次元や次数を指定して正則数の計算し,期待される値を調べた.第3に,C(X)が非特異射影多様体の2重点因子の基点となるかの研究を継続した.C(X)が1点で,その点からの線形射影像が有理スクロールとなる場合について,その次元がn,次数d,型が(a, m, b)のとき,ある正の整数sまでは,O_X(d-n-a-1-s)-K_Xが基点を持たないことを示した.他方で,これがより一般的にわかるか検討した.基点が有限個の直線束は,Zariski-Fujitaの定理で,何回か捻ると基点を持たない.この捻る回数をコホモロジーなどで評価した.しかし,これを適用しても,上で得られた結果となる訳ではないこともわかった.
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