研究課題/領域番号 |
26400042
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
小島 秀雄 新潟大学, 自然科学系, 教授 (90332824)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 開代数曲面 / 対数的小平次元 / 正規デルペッゾ曲面 / 多項式環 / 高階導分 |
研究実績の概要 |
今年度は対数的小平次元が1以下となる開代数曲面と整閉整域の高階導分の核について、国内外の研究者との研究打ち合わせを行いながら研究を遂行した。今年度得られた主な研究成果は以下の通りである。 (1) 有理曲面でない開代数曲面に対して、その対数的小平次元が非負であることとその対数的12種数が正となることが同値となることを基礎体の標数が正の場合にも示した。この結果については、これまでに得られた非有理開代数曲面に関する研究成果と合わせて論文にまとめた。 (2) 整域R上の整閉整域Aの整閉部分環と高階導分の核を研究した。これまでに研究代表者が得ている結果を用いることにより、Aの商体がRの商体上有限生成であるとき、Aの部分R代数がA上の有理的高階導分の核として表されるための必要十分条件を得ることができた。更に、Aの有理的高階導分の核のR上の超越次数がAの超越次数-1以上である場合に、その核の商体とその導分のAの商体上に延長した高階導分の核が等しくなることを示した。これらはAがR上の多項式環の場合については研究代表者によって既に得られていたが、それを一般化した。更に、AがR上有限生成でない場合に、Aの有理的高階導分の核で、Aの高階導分の核として表されない例を構成した。 (3) 対数的小平次元が0となる開代数曲面の不足数をその曲面を正規コンパクト化したときの境界因子の既約成分の個数から曲面のピカール数を引いた値として定義し、この値が曲面が有理曲面でない場合は0以下であることを証明した。更に、有理曲面で不足数が正となるものについて、その対数的極小モデルの構造を調べているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究実施計画で予定していた研究内容は主に、(1) 対数的小平次元が0となる正規アフィン代数曲面で不足数が正になるものの対数的極小モデルを分類する、(2) 非特異射影曲面上の因子でそのD次元と数値的D次元が異なるものを分類する、(3) ピカール数が1で高々有理的対数的標準特異点のみを持つ正規デルペッゾ曲面で特異点を4個持つものを分類する、(4) 整域上のアフィン多元環の整閉部分環が高階導分の核として表されるための条件を調べる、であった。 上記の研究課題の内、(1)と(4)については研究が順調に進展し、特に(4)ではアフィン多元環よりももっと広いクラスの整域についても成果を得ることができる等、当初の計画よりも研究が進展した。(2)と(3)については、ある程度成果を得ることができる見通しは立っているが、満足できる結果は得られなかった。 今年度予定していた研究課題の内、一部の課題において順調に研究が進展していないが、学術雑誌に掲載可能な結果を得ることができ、更に、当初は予期していない研究成果も得られた。以上の理由により、今年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究実施計画で予定していた研究内容で、今年度十分な成果を挙げることができなかった課題については、引き続き研究を遂行する。また、新たに研究するべき課題が見つかったことから、交付申請書に記載した研究実施計画を少し変更する。今後は次のような課題について、研究を遂行する。 (1) ピカール数が1で高々有理的対数的標準特異点のみを持つ正規デルペッゾ曲面で特異点の個数が多いものについて、Qホモロジー平面の最近の結果を用いることにより分類を行う。(2) 正標数の対数的代数曲面の極小モデル理論を用いることにより、非特異射影曲面上の因子でD次元と数値的D次元が異なるものを分類する。(3) 正標数の対数的小平次元が0以下となる開代数曲面のうち、不足数が正となるものについて、その対数的極小モデルを分類する。更に、得られた曲面の構造を調べる。(4) 正標数のアフィン平面内の曲線でその補集合の対数的小平次元が1以下となるものをこれまでに得られた開代数曲面に関する結果を用いることにより研究し、部分的な分類を試みる。 上記の研究課題については、連携研究者の岸本崇氏、齋藤夏雄氏、高橋剛氏、協力研究者のD.-S. Hwang氏と連携して研究を遂行する。また、正標数の代数幾何学の専門家と適宜研究打ち合わせを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は208,021円が次年度使用として生じた。これは、本年3月後半の旅費の支払いが4月になったことに加え、本年度の学内での業務の関係のため、予定していたいくつかの研究集会への参加を取り止めたことにより生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額208,021円については、本年3月後半の旅費の他に次のように使用する。4月に研究を遂行するために新たに必要となった代数幾何学分野の図書を購入する。また、5月に静岡大学の谷本龍二氏を新潟大学に招聘し、多項式環論に関する研究打ち合わせを行う。 次年度配分される研究経費については次のように使用する。代数幾何学と複素幾何学の分野の図書と論文誌を約12万円分 (約2万円×6冊) 購入する。また、出張先での数値計算、論文執筆、および研究発表を円滑に行うためにノートパソコン(約12万円×1台) を購入する。旅費については、外国旅費はヨーロッパで開催される研究集会への参加と研究打ち合わせをするために約30万円、国内旅費は研究集会参加のために約50万円使用する予定である。また、研究代表者が主催する研究集会での講演者の旅費として約16万円 (8万円×2人分)使用する予定である。
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