研究実績の概要 |
1974 年、Carl Faith は、彼の著書 "Algebra II" で、右入射的完全環は quasi-Frobenius 環 であるかという Kato-Osofsky の問題に対して、この問題は、半準素環でも成り立たないだろうと予想した。以来この予想は、Faith 予想と呼ばれ、多くの環論学者により研究された。研究代表者は、1993 年、馬場(大阪教育大学)との共同論文で、半準素環が片側入射的であるためのある条件を与えた。この結果が Faith 予想に応用されるという思いで、この予想を追い求めてきたが、まだ完全解決には至ってない。しかし、これまでの研究で、Faith 予想は、学生でも理解できる斜体上の両側ベクトル空間とその双対空間が両側空間として同型かという問題に置き換え、更に精密に、下記の問題に置き換えた。 つぎの性質を満たす斜体 D と一次元両側ベクトル空間 DyD があるか? DyD の右次元、左次元を それぞれ a, b とし、共に無限次元で a < b であって、DyD とその双対空間との間に(D-D)-同型がある。 本研究では、この問題を中心に研究を行った。多くの場合このような D, DyD は存在しないことを示し、この結果を平成 27 年、中国で開催されたJapan-China-Korea 国際環論研究集会の報告集で分担者小池との共同寄講論文として発表した。 斜体の研究から、Faith 予想の研究を中断し、平成 29 年度は、主に斜体上の Hamilton の 四元数環を研究した。韓国の G. Lee との共同研究(上記国際研究集会で発表)を進化する研究を行い、平成 29 年度、日本の環論および表現論研究集会で分担者小池、菊政との共同研究として発表した。全体的に見て本研究成果は十分あったと考えている。
|