研究課題/領域番号 |
26400052
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
加藤 希理子 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00347478)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 圏論 / 環論 / ホモロジー代数 |
研究実績の概要 |
通常の複体においては、微分写像2回の合成が消失するが、一般化として、2以上の整数Nに対して、微分写像N回の消失を条件にしたものがN複体である。概念自体は、単体的複体のコホモロジー計算のために1940年代に導入されたが、最近になって群の表現論、数理物理学など様々な動機から調べられるようになった。研究代表者らがN-複体に注目する理由は、Nー複体の作る三角圏が良い捩れ構造「多角形ルコルマン」を持つであろうという見込みからである。捩じれ構造の代表的なものとして安定t-構造(半直交分解)があり、連続した安定t-構造がルコルマンである。n角形ルコルマンは、連続して回帰的なn対の安定t-構造であり、高い対称性を呈する。たとえば、多角形ルコルマンを有する三角圏どうしの同値は、部分圏の三角同値に帰着される。多角形ルコルマンを有する三角圏を見つけることは、本課題研究の重要な問題である。 研究成果としてはまず、N-複体のホモトピー圏における2N角形ルコルマンの発見が挙げられる。通常の複体(2-複体)はもちろん、N-複体であるし、一般に(Nー1)-複体はN-複体である。この事実に注目すると、2-複体の圏と(Nー1)複体の圏は、N-複体の圏における安定t-構造をなすことが判る。ただし、(Nー1)-複体の圏をN-複体の圏に埋め込む方法は一通りではないから、埋め込み方を変えることによって、2N角形ルコルマンを得る。ところで、研究代表者らは、N-複体の導来圏が、三角圏としては、実は通常の複体の導来圏となることを示している。そこで、ホモトピー圏についても、同様の結論が予想されるが、実際、N-複体のホモトピー圏は、通常の複体のホモトピー圏と三角同値になることが判った。導来圏の場合の三角同値には、傾対象の存在を用いたのに対し、ホモトピー圏においては、上述の多角形ルコルマンを用いたことが特筆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予想通りに、N-複体の圏における多角形ルコルマンを実現できたことは一定の成果であると思う。通常の複体の圏と三角同値になったことは、研究に着手した当初からは予想外の結果であり、新しい三角圏ではなかったことは、研究代表者らとしては期待はずれであったが、事実の解明ではあると思う。
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今後の研究の推進方策 |
最近、四角形ルコルマンに対応する球面函手というものが研究されていることを知った。偶数角形ルコルマンが分数Calabi-Yau圏から導かれることは、研究代表者らによって示されているが、多角形ルコルマンと函手との関連について、詳しく調べたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の海外出張において、為替レートの変移によって、支出予定額とのずれが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
為替レートの変動等に伴う、微調整に応じるための使途とする。
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