研究実績の概要 |
本研究では,次数付き超曲面上の極大コーエン・マコーレー加群について研究を行った.ゴーレンシュタイン環上の極大コーエン・マコーレー加群のなす圏はフロベニウス圏であり,その安定圏は三角圏の構造を持つことが知られている.超曲面はゴーレンシュタイン環の典型例であり,さらに次数付き有限表現型の場合,その三角圏としての構造は大変きれいなものであることが知られている. 本研究における最大の結果は,A型およびD型の有限表現型であるような次数付き超曲面上の極大コーエン・マコーレー加群のなす安定圏におけるシック部分圏を完全に分類したことである.すでに知られた結果として,C. Ingalls-H. Thomas による分類の結果があるが,本研究ではさらに具体的に分類を与えた.すなわち,ある種の図形と1対1対応があること,それを用いることにより,任意の極大コーエン・マコーレー加群に対しそれを含む最小のシック部分圏を容易に見つけ出すことができることを示した.この結果は8月にアメリカ合衆国シラキュース大学で開催された研究集会 (ICRA 2016) で発表した.また,呉工業高等専門学校の影山優氏との共同研究では,反射的圏の分類を与えた.この結果は Communications in Algebra に掲載された. また,すでに述べたようにゴーレンシュタイン環上の極大コーエン・マコーレー加群を知ることは超曲面上の極大コーエン・マコーレー加群を知ることにつながる.そして,ゴーレンシュタイン環上の加群が極大コーエン・マコーレー加群であるための必要十分条件はそれが全反射的であることである.その観点から,加群の全反射的性に関する研究も行った.この研究は奈良工業高等専門学校の飯間圭一郎氏と共同研究を行った.この研究結果は Communications in Algebra に掲載されることが決定している.
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