前年に引き続き,射影多様体,特に(平面)代数曲線のガロワ点理論の展開と応用を行った.主に応用について研究した.射影平面上の点で,その点からの点射影からひき起こされる関数体の体拡大がガロワ拡大となるときに,その点をガロワ点と呼ぶ.ガロワ点とならない場合は,体拡大のガロワ閉包をとることでガロワ群(モノドロミー群)を決定する.このような状況のもと,以下の研究を行った. 1.特異点を多く持つ平面曲線の構成の際に使われるクンマー被覆について,ガロワ点理論に応用できないかを検討した. 2.ガロワ点がひき起こす双有理変換について,クレモナ変換群の研究との融合を試みた.重複度3の尖点を持つ平面4次曲線は,射影同値を法として2種類存在することが知られている.片方はガロワ点を1個持ち,他方は2個持つことを以前証明している.この場合,これらのガロワ点がひき起こす双有理変換の性質を解明した.それらは,いわゆるジョンキエール変換であり,さらには射影変換と共役であることを証明した.6月に開催された「Workshop on Galois point and related topics」において,得られた結果を発表した. 3.大渕朗氏(徳島大学)との共同研究で,複素鏡映群と準ガロワ点の関係について研究を開始した. 4.パヴィア大学(イタリア共和国)で開催された「Workshop Geometric Galois theory and monodromy」において,準ガロワ点について講演し,参加した研究者らと意見交換を行った.
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