研究実績の概要 |
今年度はスティーフェル多様体と旗多様体の極限について考察し,論文を執筆した(首都大の高津氏と共同). 以前の研究において,ユークリッド空間内の半径が次元の平方根の球面の次元が発散するときの極限空間がガウス空間(実数直線の無限直積空間にl_2距離関数と無限次元ガウス測度を備えた測度距離空間)へ収束すること,および射影空間がガウス空間の商空間へ収束することを証明したが,その手法を拡張・一般化することにより,スティーフェル多様体の次元が発散するときガウス空間へ収束することを証明した.ここで,スティーフェル多様体はnxk(k≦n)の直交行列全体だが,その距離関数はフロベニウス・ノルムのnの平方根倍とし,測度はハル確率測度とする.kはn以下の自然数で,nに応じて動いてもよいが,nのあるα乗(0<α<1/3)より小さいと仮定する.さらに旗多様体がスティーフェル多様体の商空間として得られることを利用して,旗多様体がガウス空間の商空間へ収束することを証明した.旗多様体は有限自然数列k(1),k(2),...,k(l),nによって決まるが,(n, k=k(1)+...+k(l))-型のスティーフェル多様体のユニタリ群U(k(1)),...,U(k(l))の直和による商空間として実現される.このとき,k(1),...,k(l)は固定して,nが発散したときの旗多様体の極限がガウス空間のU(k(1)),...,U(k(l))の直和による商空間となっていることを証明した.旗多様体はグラスマン多様体の一般化となっていることをコメントしておく.さらに射影空間の一般化である射影スティーフェル多様体の極限も決定した.これらの結果の応用として,スティーフェル多様体と旗多様体のオブザーバブル直径の漸近的な評価を得た.
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