研究実績の概要 |
今年度は次元が無限大へ発散するような楕円の列の極限空間について考察し,今後の研究に役立つ指針を得た(数川氏と共同).これについてだいぶ研究が進んできたので,次年度には論文執筆できると考えている. また,時実数直線の区間[0,1]上にあるボレル確率測度を取った時に,そのn乗積空間のオブザーバブル直径の評価についても考察した.これは密度関数が零点を持つときに非自明な問題となるが,零点の周りの密度関数の減衰速度がオブザーバブル直径のオーダーに影響を与えると予想した(小澤氏と共同).この研究はまだ未解明な部分が多く,はっきりした研究成果を出すには時間がかかりそうである. ここ数年に渡る研究(山口氏,永野氏と共同)により,上に曲率が有界な2次元アレクサンドロフ空間の構造について,完全に解明しつつあり,現在論文を執筆中である.そのような空間は,局所的にある種の分岐被覆空間となっていることが判明した.先行研究として,BuragoとBuyaloは空間がポリヘドラルであるときに局所構造を解明し,一般の場合に予想を立てたが,本研究により彼らの予想を完全に解決することになる.さらにガウス・ボンネの定理も証明した. 断面曲率が-1≦K<0を満たすような完備非コンパクトなリーマン多様体Nのエンドにどのような多様体が現れるかは一つの大きな問題である.今年度,ある種の3次元グラフ多様体の族がエンドとして現れることを証明した(藤原氏)と共同.これはAbresch-Schroederの先行研究を大きく一般化するものである.実際に研究を終えたのは令和元年5月であった.
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