研究実績の概要 |
本研究はリーマン面の研究を軸として, 代数幾何, 微分幾何や組み合わせ論的な観点を交えることにより新しい研究手法を開発することを目的とする。平成27年度の研究においては, K3曲面上の有理曲線の存在に関して, 多様体の退化及び, 障害が存在する場合の変形理論に関する新しい手法を用いて, 長年未解決であった予想を解決する半分の行程に当たる論文を執筆した。特に, 任意の射影的K3曲面のモジュライ空間において, 可算無限個の規約な有理曲線を持つK3曲面のなすZariski開集合が存在することを示した。また, 障害のある場合の変形理論のもう一つの応用として, パリ第7大学のTony Yu氏との共同研究により, 平面上の周期的トロピカル曲線と複素トーラス上の任意種数の正則曲線についての対応定理を証明する論文を執筆した。一方, 2次元上の曲線に限らない場合については, 任意次元の実アファイン空間上の任意の価を持つ頂点に対応するトロピカル曲線と複素曲線との対応について研究を進めた。その結果として, 任意の価を持つ頂点を含むトロピカル曲線に対応する退化した正則曲線の変形に対する双対障害空間を一般に記述でき, それを元に非過剰型のトロピカル曲線の概念を拡張し, それらの拡張された非過剰型のトロピカル曲線に対する複素曲線との対応定理を証明した。さらに, 種数1の過剰型のトロピカル曲線のループが任意の価を持つ頂点を含む場合に, 対応する退化した正則曲線に対する新しい形の平滑化可能性定理を証明した。
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