研究課題/領域番号 |
26400065
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 雅彦 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (70183035)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 群作用 / 局所剛性 / シュワルツ微分 / 構造安定性 / 双曲力学系 |
研究実績の概要 |
リー群 SL(n+1,R) の余コンパクト格子の n 次元球面 (ただし,n>1) への標準的射影作用が局所剛性的であることが,Katok-Spatzier およびわたし自身により証明されている.Katok-Spatzier の定理の証明は純粋に力学系理論的であるのに対し,わたしのそれは極めて幾何学的な色彩をおびている.とくにそこにはシュワルツ微分の高次元化に相当するコサイクルが登場する.ただし,それを認識したのはその定理を証明してから随分とあとのことであるが.いずれにせよ,その発見が本研究課題の出発点のひとつであった.ところで,上述の局所剛性定理のわたし自身による証明においては,そこに現れる技術的な困難を回避するために,n > 20 という過剰な仮定をおく必要があった.その仮定を取り除くことが,平成26年度の課題であった.証明には群作用からサスペンションである葉層化束を作るのであるが,その束をより大きなもので取り替えようというのが,基本的な着想である.しかし,その着想を実現するために,新たな問題に直面する.ある固有不連続な作用に対し,それを少し摂動しても固有不連続であることを示す必要が生じた.ある弱い双極性を有する群作用の構造安定性を仮定すれば,この問題が解決することを示すことは比較的容易であった.一方,必要とする構造安定性定理は,すでに Pugh-Shub により得られている.ここまでは,順調であった.ところが,専門家によると,Pugh-Shub の定理の証明は必ずしも信頼に足るものではないとのことである.現在彼らの定理の別証明を試みている最中である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Pugh-Sub の定理の彼等による証明が必ずしも信頼できるものでないという見解が,一部の専門家の間にある.そこで,その定理の証明を自分自身で行ってみることにした.それが遅延の最大のりゆうである.
|
今後の研究の推進方策 |
まずは,Pugh-Shub の構造安定性定理の証明を自分自身で行う.その後,上述の群作用の局所剛性定理の別証明を完成させる.さらには,シュワルツ微分や複比などのさらなる応用の探求と,それら諸概念の背後に存在するかもしれないより深遠な真実を探求する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究の遅延により,昨年度実施する予定であった事柄の一部を今年度に延期したため.
|
次年度使用額の使用計画 |
繰り越しした研究費の一部は,来年度に繰り越すことになるかも知れない.それ以外は,旅費等として利用するつもりである.
|