研究課題/領域番号 |
26400066
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山田 光太郎 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (10221657)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 特異点 / ミンコフスキー時空 / 極大曲面 / ド・ジッター空間 / 平均曲率 / 折り目特異点 |
研究実績の概要 |
3次元ミンコフスキー空間の極大曲面(平均曲率0の空間的曲面)の具体例,特にユークリッド空間の三重周期的な極小曲面として知られているシュワルツ曲面の対応物を調べた.この曲面は円錐的特異点をもつ三重周期的な曲面になっている.この双対(2つの主曲率の役割を入れ替えた曲面)も三重周期的になるが,「折り目特異点」という特別な特異点をもつ.折り目特異点の像はなめらかな光的曲線となり,この曲線にそって曲面の像は実解析的に拡張できて,時間的な極小曲面,すなわち平均曲率零の曲面が得られることが知られている.これに従い,シュワルツ型の曲面の折り目特異点をもつ場合の拡張を考え,その大域的な性質を考察し,平均曲率が0の混合型(causal type が変化する)の埋め込まれた三重周期的曲面を発見した. 一般に,光的な曲線で非退化(加速度が速度と平行でない)なものを境界にもつ空間的極大曲面は,光的な曲線を超えて時間的な極小曲面に拡張される.しかし,光的な直線をはさんで空間的極大曲面から時間的極小曲面に変化するような曲面は知られていなかった.このような例を構成した. また,3次元ド・ジッター空間の平均曲率1の曲面のうちド・ジッター・カテノイドというクラスを分類した.とくに,2つの端(エンド)が完備でない場合が興味深く,パラメータ表示される部分がド・ジッター空間の閉集合となる曲面の真部分集合となることがわかった.このような曲面のクラスは興味深い対象と思われる. また,特異点をもつ曲面の「内的な幾何学」すなわち,リーマン多様体の幾何学の特異点を許す版を構築するために,特異点をもつ曲面の計量の性質を調べた.とくに,交叉帽子とよばれるジェネリックな特異点をもつ曲面の計量等を調べ,曲面の不変量のうちいくつかは「内的」であることを示した.その過程で曲面の計量を保つ変形,すなわち等長変形を具体的に構成した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
すでにド・ジッター・カテノイドの分類はほぼ完成していたが,一つだけ残っている除外例の挙動の解析が完了し,論文執筆準備中である.さらに,ミンコフスキー時空の平均曲率零の曲面で,その型 (causality) が変化するような具体例を得て,そこからあらたな幾何学的な枠組みが見つかりつつある. また,ミンコフスキー空間の極大曲面の折り目特異点という特別な特異点は,その特異点を超えて実解析的な曲面の拡張ができることが知られているが,複数の具体例において,拡張された曲面の大域的な性質を調べることができた. これらの具体例を調べることにより,研究計画時の予想よりもより興味深い幾何学的枠組みが考えられることがわかってきた.研究期間中に,本申請の目的を含む,より深い成果が得られると期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
型(causal type)が変化する平均曲率0の曲面や,ワイエルストラス型パラメータ表示が閉曲面の真部分集合となるような曲面のさまざまな具体例を構成する.このような曲面は現在のところ「例」として個別に現れているが,多くの例を調べることにより,適切な幾何学的対象を設定することができるはずである.このような設定のもと,曲面の性質を調べる.ワイエルストラス表現公式が,リーマン面上の正則なデータで表されていることから,上記のような例は「リーマン面の崩壊」を表していると考えられる.この意味での,リーマン面の崩壊と曲面の幾何学の関係を明らかにする.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度計画していた物品購入(書籍)が年度内に間に合わなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
夏までに微分幾何学関係の書物(約20万円程度)を発注する予定である.
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