研究課題/領域番号 |
26400066
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山田 光太郎 東京工業大学, 理学院, 教授 (10221657)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ミンコフスキー空間 / 零平均曲率曲面 / 因果特性の変化 / ド・ジッター空間の平均曲率1曲面 |
研究実績の概要 |
2016年度は,主として3次元ミンコフスキー空間の,因果特性が変化するような曲面の研究を行った.とくに,平均曲率が零でない定数であるような曲面を含むクラスでは,因果特性が空間的から時間的に変化し得ないことを示した.一方,非退化な光的曲線を境に因果特性が変化するような曲面で平均曲率が恒等的に零ではないものの例を数多く構成することができた. 3次元ミンコフスキー空間の極大曲面(平均曲率が恒等的に0となる空間的曲面)のうち,折り目特異点をもつものは,その折り目を超えて実解析的に時間的な零平均曲率へ拡張できる.したがって,上にのべた因果特性が変化する例は零平均曲率曲面の場合はたくさん構成できる.さらに,このような現象をもつ曲面の大域的な幾何学的性質をしらべた:もっともシンプルと思われるクラスを設定し,分類を行い,この分類から,空間的平面全体で定義されたグラフで,平均曲率が恒等的に0となるものが大量に存在することを示した.これは零平均曲率方程式とよばれる非線形偏微分方程式の平面全体で定義された解がたくさん存在することを示している.このような例は,1983年に小林治によって得られた2つの例以来見つかっていないようである. 一方,3次元ド・ジッター空間の平均曲率1の曲面については「カテノイド型」とよばれるエンドを2つもつ曲面のクラスの中に,ワイエルストラス表現公式でカバーされる曲面を超えて解析的延長をもつクラスが複数見つかった.現在,この現象の解明を目指して解析的延長の理論の枠組みを考察している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度から2016年度にかけて代表者の大学運営に関わる業務等が予想以上に手間を要したことを含め,さまざまなスケジュール調整をする必要があったことから,2016年度中に行うべき研究打合せなどが一部未了になっており,補助事業期間の延長を申請した.本課題の成果の周知をする重要な機会として2016年に開催を考えていた「スペイン・日本ワークショップ」の開催日が,1年先送りとなり2017年9月に決定したので,それに向け成果の整理を行っている. 研究成果は十分に上がっているが,申請時に掲げた「ド・ジッター空間の平均曲率1をもつ3ノイドの分類」は,3ノイドに至る以前の2ノイド(カテノイド)についてさまざまな興味深い現象が見つかってきたため,先送りとなっている.むしろカテノイドに現われる現象の解明が十分興味深い内容となるはずで,その方向で検討を始めた.
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今後の研究の推進方策 |
3次元ド・ジッター空間の平均曲率1をもつ曲面について,その解析的延長を調べる.とくに「カテノイド」の幾何学的性質の解明をめざす.実際,2017年度には,この問題に共同で取り組んでいる高麗大学の梁盛徳教授を招聘し,研究打合せ・討論を行う.いわゆる「幾何学的カテノイド」は梁教授らの研究で完全に分類されているが,我々が考えている「解析的カテノイド」はすこし違ったクラスで,その間の関係を明らかにするとともに,解析的延長の有無についての議論を行いたい.さらに,得られた成果は,2017年9月に開催予定の「スペイン・日本幾何学ワークショップ」において何らかの形で公開することを考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度から2016年度にかけて代表者の大学運営に関わる業務等が予想以上に手間を要したことを含め,さまざまなスケジュール調整をする必要があったことから,2016年度中に行うべき研究打合せなどが一部未了になっている.また,本課題の成果の周知をする重要な機会として2016年に開催を考えていた「スペイン・日本ワークショップ」の開催日が,1年先送りとなり2017年9月に決定している.
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度前半に,高麗大学の梁盛徳教授を岡山大学に招聘し,研究打合せを行う.また,2017年9月に開催される「スペイン・日本幾何学ワークショップ」において,成果発表および研究打合せ・討論を行う.
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