ド・ジッター空間の曲面の解析的延長問題の基礎理論がほぼ満足いく形となった.とくにカテノイドの解析的延長の可能性については一定のめどがついたと考える.この対象の研究はまだ継続するので,論文としての発表は2018年度以降となる見通しである.なお,ここで対象としているド・ジッター空間の平均曲率1の曲面は,因果特性を空間的から時間的に変化させないことをすでに示している. 一方,ミンコフスキー空間の極大曲面については,退化点を境に空間的から時間的に因果特性を変化させるような曲面の例を数多く構成した.とくにその中で代表者らが「小林曲面」と名付けたクラスの分類を行い,そのあるサブクラスは空間的な平面全体の上のグラフとなること,すなわちミンコフスキー空間の零平均曲率曲面方程式に関するベルンシュタイン型定理の反例(小林治が1986年に構成した2つの例以外に)大量に存在することを示した. さらに,Klyachin による,ミンコフスキー空間の零平均曲率曲面の退化点における「直線定理」すなわち「3次元ミンコフスキー空間の零平均曲率曲面の誘導計量が退化する点において,誘導計量の行列式の微分が消えているならば.曲面の像は光的直線を含み,その直線上で誘導計量は退化する」ことに別証明を加え,さらに一般化を行った.これにより,とくに平均曲率ベクトルが退化点を越えてなめらかに拡張される場合に対しても直線定理が成立することがわかった.
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